ぶっ飛ばす | ナノ
怪獣との出会い


関東最強と謳われ、無敗を誇る喧嘩好きと遼は各地に名を知られているが、立派な女子中学生である。
学校も適当に、街中を闊歩するモデルのような美しい青年にしか見えない。

「オイオイ、野郎が寄ってたかってリンチかレイプか知らねえが。美少女の面殴って楽しいか?」

喧嘩だ、と騒ぎを聞きつけて遼は口元に獰猛な笑みを浮かべていた。凄まじい威圧感と存在感は、誰もが恐怖を抱く。慣れるには、時間がかかるのだ。

「なんや自分!これは俺の喧嘩や、手助けなんぞいらんわ!」

「ほー?意識ぶっ飛ばしてタンカ切る関西人か。残念ながら、もう終わってんだけどな。」

遼の周りには倒れた男達。女も混じっている。少女が意識を失っていたのは数分だが、遼にとっては充分すぎる時間だった。
ネオンに輝く、刃のように鋭い目は少女を見下ろす。一見、遼は無傷に見えた。

「な、え!?」

「お嬢さんは知らねえみてぇだけどな、俺はこのあたりじゃちょっと有名人なんだよ。佐々木遼、ってんだ。立てるか?」

「アホ言いなやっ…いつっ!」

気丈に遼を見上げ、立ち上がろうとした少女は足を痛めたらしく、痛みを訴えてしまった。遼は、見越して言ったのだ。生半可な修羅場は越えていない。

「アホって、お前だろ?どう見たって武器仕込んでるか足勝負。知り合いが近所にいるから黙っとけ。」

悲しいかな188センチの長身、女の子など軽々と持ち上げる馬鹿力。
羞恥に顔を赤くし、苦情を言いかけた少女は遼の眼光に口を噤んだ。黙っとけ、と言われた以上何かされたらとんでもない。

「よ、レンちゃん。悪いんだけど急患。コイツの手当てと湿布くれ。」

「浅野、か?」

呼びつけられた柳は、蓮と遼を見比べた。あまりにも絵になりすぎるのだ。

「うん。浅野蓮。後輩だろ?レイプされそうだったから助けてやった。」

「何で、うちの名前?」

遼の眼光が緩んだので、蓮は尋ねた。いちいち、遼には謎が多いのだ。

「レンちゃんより悪質な、情報屋やってんのさ。大阪四天宝寺二年、おっしーの従兄弟がいる学校。そっから家出。ま、今回はラッキーだったぜ?何せ俺が女の子助けるミラクルだ。」

「佐々木、それだと同性愛者に間違われるぞ。女だろうが。」

柳によって手当てされ、蓮は自宅へと帰った。あまりにも鮮やかで、尊大で実力に溢れた女とは思えない女を、容易く忘れる事は出来ない。青学の三年と、柳に言われるまで高校生だと勘違いしていた。
これが、2人の出会い。

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