文句あんのか | ナノ
燃えるけど燃やすな


関東最強の名を(要らないけど)欲しいままにしている遼。意外と、噂だけが一人歩きしている場合もあるのだ。

「ワイシャツの佐々木…暴力団襲来の折りワイシャツ一枚で事務所に乗り込み、ワイシャツが敵の血で真っ赤に染まるまで暴れまわった伝説の男…怪獣佐々木遼!!俺達の大先輩にあたる人だ…。」

ぶんぶんと喧嘩を売ってきた高等部の先輩を片腕で振り回し、適当に壁へ叩き付けた遼は微妙な顔で、神尾を見た。

「色々ツッコミどころがあるんだけどな。俺女だし一つしか年変わらねえしワイシャツ一枚とかどこの露出狂だよ。つーか怪獣って俺人類にすらなってねぇじゃんか。」

「…ですね。でも噂あるんですよ。」

返り血で所々赤くなった青学女子制服。不似合いにも程があるし、遼が暴力団を壊滅させたのは事実だ。

「まぁ、色々あるな。実は未来から来たロボットだとか宇宙人だとかぶっちゃけあり得ねぇもんばっかだけど、何かその話生々しいぞ。」

「と言うか…何で神尾がここにいんだ。」

青学校内。累々と横たわる怪我人達の中、乱れた髪を直す訳にもいかない遼は桃城を見た。

「橘さんに頼まれたんだよ。佐々木さんの料理は美味いらしいから試食して来てくれって。」

「…ライオン大仏、自分で来る勇気無かったのか?確かに食えねえもんじゃねぇけどよ。」

いちいちごもっともなツッコミだが、遼は自分の怖さを自覚していない。立てば暴君座れば野獣、歩く姿は大怪獣。美人の形容詞を怖くした一作、と手塚が国語で評価されていた。

「佐々木先輩、手ぇ出さなきゃやんないッスよね。」

「タケピー、俺連続殺人犯じゃねぇんだけど。」

呆れたように見下ろしながら、手に付いた血を制服で拭いている。女らしさの欠片も見当たらない。

「ま、今日は俺的自信作作るし…多分みっちゃんかおっしーが来る。それでも良けりゃ来いよ。」

「俺もいいッスか!?」

「別に構わねえ。…あ、回覧板回すの忘れてた。」

所帯じみた大怪獣の平和な一面。それなりにご近所付き合いもやっていない訳ではない。ただし、家にあまりにも居ない。

「あ、俺も今日燃えるゴミなのにジャンプ廊下に出しちまった。」

「ジャンプって燃えるゴミじゃねぇのか?何か燃えるし。」

二年生達は口々に納得してはいけない納得をしてしまっている。

「ジャンプは資源ゴミだろうが。リサイクルに協力してやれよ。」

結局、手塚と忍足と神尾と桃城の食事を作る遼であった。

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