文句あんのか | ナノ
男心も女心も謎


手塚家に訪問した遼と跡部は、手塚に色事は無かったのだと伝えた。主に跡部が遼の説明不足を補っていたが。

「つーワケ。別におっしーだけ泊まってねぇし。みっちゃんも泊まっただろ?何でそーゆー方向に突っ走るのか知らねえけど。」

「たまに怪我で俺のところに来る事もある。大概泊まるがな。俺様も手負いでも遼に手を出す自殺行為はしねぇ。」

言われてみれば納得してしまう。問答無用で叩き伏せる男がいるのか、甚だ怪しい遼を手込めにするのは命懸けだ。寧ろ半殺しにされる。

「…早合点したのは解った。」

「おっしーそーゆー対象になんねえから。けごたんも利害関係だしな。」

「そういう事だ。遼が情報を売る代わりに治療してんだよ俺達は。」

じゃ、俺おっしーが観てる映画の続き観るから、と帰ろうとした遼を跡部は制した。

「遼、少しは甘やかしてやれ。」

「そーゆーもん?」

フッと跡部は笑い、遼に耳打ちして帰った。

男ってのはこういう時に居て欲しいもんだ。

遼は仕方無く手塚の部屋に向かった。ちなみに、ご家族の皆様は微笑ましく見守る方向。手塚が在室していれば、ノックをして入るのが遼だ。

「…何かあったか。」

「けごたんに傍に居てやれってさ。さっすが200人も束ねちゃ居なかったなぁ。」

机で宿題をしている手塚の頭を軽く叩く遼。仕草は男でしかないが、結局は女である。

「…お前の特別には、どうしたらなれる?」

「さてね。俺には特別なんて人間はいねぇぞ。血縁ばっかりはどうしようもねぇけど。」

友達は特別か?と遼は悪戯っぽく尋ねる。つい昨日小難しい本を読んでいた影響で、根本的な問題に突入している。

「…友達か。」

「やっすい言葉だよな。クラスメートは友達なんて誰が決めた?」

ザクザクと突き刺さる遼の言葉は、遼が知っているから言える。幾多の荒事を潜り抜け、最強と謳われているからこそ。

「…遼に…仲間は居ないからな。」

群をなすどころか突出している遼に仲間は必要無い。足手まといにしかならないから。

「仲間?寄ってたかって初めて殴れる根性無しになる予定はねぇぞ。」

強すぎる孤独。手塚も少なからず理解出来る。だがこの誇り高い遼は傷を舐め合う行為自体、厭わしく苦手通り越して嫌いだろう。大が付くほど。

「…」

「みっちゃんはさ、何だかんだで支えがあんだろ。柱ってのは一本じゃ意味がねぇからな。」

建築には詳しく無い、と語る遼の言葉に手塚は耳を傾け続けた。

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