文句あんのか | ナノ
軽い打撲で運がいい
遼は神出鬼没、居なくなったと思えば現れ、現れたと思えば居なくなる。
「…テメェ何他人様のベッドで爆睡こいてんだー!いつ鍵渡した!?」
「ブフェッ!…おはようさん、遼。」
迷う事無く、コンビニで買ったばかりのペットボトルを投げつけた遼に、忍足は手を挙げた。
「おはようさんじゃねぇよ不法侵入者。いやー氷帝もおしまいかめでてぇ限りじゃねぇか。」
「いや、これには深いワケがあんのや!」
「三流ドラマならよそでやれや。ちょいと気ィ高ぶってっからなぁ、すぐに楽にはしてやんねぇぞ。」
「…すんません遼が俺んちで寝てる間に鍵拝借して合い鍵作りました。」
ベッドの上で土下座する忍足。殴り合う前のお馴染みのポーズで遼は歩み寄っていく。
「一発、ご自慢の面にでも叩き込んでやる。」
「やから!今日は遼の誕生日やん!」
ピタリと動きを止めて遼は携帯を取り出し、確認して頷く。
「そーいやそうだがそれと不法侵入の何が関係してんのか是非ともお聞かせ願いたいところですなぁ。」
首を傾げて両手をポケットに突っ込む遼は、はっきり言って怖い。+目の笑っていない笑顔なのが慣れていても、怖い。
「…誕生日は驚かすんがセオリーやん。」
「あぁ、弥生時代位の古い習慣だな。」
おずおずと遼を見上げる忍足は本気で泣きそうだ。
「…最初は死ぬ覚悟で添い寝しよ思たら居らんし…帰ってけえへんかなて。」
「ご期待通り帰ったじゃねぇか。」
「やから、今日は1日俺が嫁さん役で新婚さんごっこや!」
「断る。」
身も蓋もない。しかし普通喜ばれるような代物でもない。遼がいくら男前でも女である事は変わらない。至って普通の反応だ。
「遼…!そこは自分が嫁さんやる言うとこや…!」
「生憎関東育ちだからな、関西のテンションは知らねえよ。」
「冷たすぎや自分…!」
「冷たくて結構。用は終わったか。」
真冬のアラスカですかと聞きたくなる程、遼は記念日だのに興味は無いから冷たい。バレンタインは逃げ回るが。
「跡部と俺から。ブラックパールのピアスと遼に似合いそうなネックレス。」
ごそごそと忍足は箱を差し出した。出どころは枕の下と言うのが…何とも言えない。
「ブラックパール、なぁ…法事にでも使えってか。」
片手で受け取りながら遼は独り言を呟く。
「遼は黒と銀が似合うて話したんや。」
「つまり、けごたんも一枚噛んでんだな。」
「う。はい、そうです。」
「けごたんに伝言だ。きっちり返すってな。」
死の宣告を受けたようなものである。忍足は早々に帰って行った。
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