文句あんのか | ナノ
意地悪な嫌がらせ


とある春の休日。遼は思い立ったようにテニス部の練習を見物にやって来た。

「…佐々木、何の用だ?」

「そりゃ勿論、みっちゃんで遊びに。」

結局俺よりチビだしーと茶化している遼。

「練習の邪魔をするな。」

「してねーじゃん。みっちゃんがご丁寧に返事してるだけ。」

ファンクラブも居ない貴重な集中出来る練習時間。手を出されなければ出さないと知っていても…二年以下は怖くて仕方がない。

「ラケット握るとこほっそいなー。俺が持ったら握り潰しそうだ。」

「…遼先輩だったらやりかねねーな、やりかねねーよ。」

「桃城!グラウンド10周!」

「ひゅー。聞きしに勝る部長様権限。地獄耳だな。」

全員グラウンド送りにしてやろうかと、次々に近寄る部員に話し掛けてはグラウンド送り。ちなみに遼はちゃんとテニスコート外に居る辺り悪質だ。

「みっちゃん、最高記録何周?」

「…75周だな。」

「ビッミョー!人類の限界に挑ませてみようぜ?」

200とかさー、と完全に他人事の遼。ジーンズに鎖が付いて、ゴツい靴と春物ジャケットを羽織る状態では走らせにくいと確信しているからだ。

「佐々木なら何周走れるんだ。」

「どうかな。持久走は女子扱いでぶっちぎりだし…少なくとも水アリなら500はイケる自信あんぞ。」

青学人外代表と言える。キレてしまえば金網も投げかねない。…実際、一年の時に投げたのだ。だから青学テニス部の金網は一部だけ綺麗なのだと三年は知っている。

「水分有りで500か。」

「俺汗っかきなのみっちゃん知ってるだろ。」

一年には意味深にしか聞こえない、遼と手塚の付き合いの長さ。遼が裏から手を回す意味も無い、教師の事情だ。

「滝のように流すからな。」

「こればっかは体質だ。俺にゃどうしようもねぇ。」

ますます意味深。遼が女なのは有名な話で、更に手塚がストッパーなのも一年には広まっている。

「に、しても…後輩のちびっ子達は俺にビビりまくりだな。」

それはお前がICBMだからだと言いかけて手塚は押し黙った。遼を言葉で怒らせるのは至難の業、しかし藪をつついて虎を出す真似は出来ない。

「…俺は遊ばないぞ。」

「みっちゃん、俺はみっちゃんで、遊ぶっつった。でも気が変わった。」

にやぁ、と笑う遼に後輩達はもう死刑宣告を待つ罪人の気分だ。

「何をする気だ。」

「こんだけやってて解んねえ?テニス部の連中グラウンド送りさ。みっちゃん鈍感にも程があるぜ。」

違う意味で死刑宣告されてしまった部員だった。

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