文句あんのか | ナノ
手塚君正解です


「どうぞ、お上がり下さいな。大したお持て成しも出来ませんが。」

にっこりと微笑むシーナに否と言わせる気が全くないと手塚は判断して、遼の右に座った。

「恐れ入ります。はじめまして、僕は佐々木のクラスメートで、手塚国光と申します。」

「ご丁寧に有り難う。私はシーラルナ、愛称はシーナよ。遼さんには勿体無いくらいハンサムね。」

「ついでに本名は椎名信雄。歴とした野郎だ。下とってるけどな。」

それにシーナは扇を広げて口を隠し、首を傾げた。

「喉もちゃんとやったわ。遼さんより胸はあるもの。お茶は何にするの?」

「今日のオススメは何だよ?」

「白牡丹のいい茶葉が入荷してるわ。仄かな甘味が絶妙よ。香りも私好み。」

「んじゃあそれ。黄茶は高いらしいしな。」

「手塚君は?」

「同じものを。」

少し待ってね、とシーナは笑みを浮かべて優雅に立ち去った。

「…無駄知識満載だな。」

「あいつが何度も説明してりゃ嫌でも覚えんぞ。」

会話終了。血生臭いジャケットを脱ぐ遼は、下に半袖のTシャツだった。

「おまちどおさま。今日は奢りよ。」

「…天変地異の前触れか?守銭奴なのに。」

シーナはクスクスと笑いながら手際良くお茶を淹れ

「クリスマスに遼さんがハンサムを連れて来てくれたお礼よ。私ももう少し若かったら口説いたわ。」

「確かにみっちゃん老け顔だけど、アラフォーに言い寄られても嬉しかねぇだろ。」

手塚は固まった。人は見かけによらないと知っていても…衝撃事実だ。

「少し熱めにしてるから香りを楽しんでね。それじゃ可愛い娘に、メリークリスマス。」

「言ってろ。」

笑いながらシーナは退室した。茶器を持ち、遼は香りを楽しむ。

「なんだかんだで茶の淹れ方だけは一級品だもんなぁ。」

音を立てずに一口。舌で転がすように味わう。

「化粧臭さが無かったな。」

「みっちゃん、お茶は香りも楽しむ嗜好品。店長が化粧臭かったら台無しだ。」

この界隈では有名な変わった店、和服美人の店長が男だとは知らずに通い詰める男から貢がれている。

「…ホワイトクリスマスだな、今年は。」

「そうだな。天気予報でも可能性はあるって。俺はいつも通り返り血だらけだ。だいぶ大人しくなったけどなぁ。」

「怪我のプレゼントを贈る喧嘩のサンタか?」

「ハッ、俺から手は出してねぇよ。一発は記念に殴らせてやるし。」

「で、今日は腕の打撲か。」

クリスマスとかその他色々抜きにしても、遼と甘い空気になるのは難しい気がすると手塚は思った。

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