文句あんのか | ナノ
食べなくなったら危険


遼は38度以上の熱を出し、否が応でもベッドの住人になっていた。特にしなければならない事も無いし、薬を飲んで寝てればいいだろう、と楽観視してメール処理をしていたのだが…音を立ててドアが開き、幸村と柳が立っていた。

「お?ユキチャンとレンちゃん。どーした?平日だろ。」

「どうしたじゃないよ。遼が風邪ひくとかどんなウィルス兵器?」

「おーいユキチャン。俺そんな健康優良児に見えんのか?」

「データを取り始めて一年と3ヶ月と7日、未だかつて聞いていない。」

やれやれ、と遼は首を竦めて

「ま、適当に座れよ。コーヒーぐらい淹れてやっからさ。落ち着け。」

「ダメ。遼は風邪ひいてるんだから。」

身を起こそうとした遼を幸村が押さえた。肌に触れただけでも高熱であることははっきり判る。

「確かに近年稀に見る高熱だけどな。関節ちょっといてぇし。でも風邪ひかなかったってのはねぇぞ?単に動き回るだけだ。」

ふぅ、と柳が額を押さえ溜め息を吐いた。

「赤也が知ったら喜び勇んで殴りにかかるぞ。」

「あんな力任せの殴り方じゃ俺に勝つなんて百年早いぜ?病人でもな。」

「遼なら勝つだろうけどね。脇腹切られても包帯で済まそうとしたし。まぁ大人しくしててよ。お粥ぐらい作れるから。」

「食欲普通でついさっきコンビニ弁当食ったばっかだぞ。」

「遼…こういう時ぐらい甘やかさせてよ。何でもやりそうなんだから。」

苦笑しながらコツンと額を合わせる遼と幸村。儚げな美少年と目つきが悪い男がやっているようにしか見えない。

「仁王も来たがったんだが丸井も便乗しそうでな。ジャッカルが巻き込まれる確率98.9%と言うわけで俺達となった。」

「ヒロリンとサナゲンとあかやん除外か。まだ根に持ってんのか?」

「相手は仁王でも格好は柳生だったからな。疑惑はまだ晴れていない。」

「遼、何の話?」

ギュッと抱き付いた幸村に遼は笑いながら説明した。

「え!?遼のファーストキス仁王なの!?」

「話が飛躍しすぎ。ファーストキスは女だった。道端でいきなりシャツ引っ張られて、な。見覚えの無い女だった。」

「カッコ良すぎるのも大変だ。」

「ユキチャン鏡見て来い。ユキチャンもイケメンだろ。」

「遼みたいに目を引くタイプじゃないから。」

「バレンタインで立海1チョコ貰うクセによく言うぜ。」

「次回は断るよ?欲しい人がいるからって。」

「それもまたお嬢さん方には気の毒な話だな。」

「佐々木も前回は38個だったな。」

「女だって言ってんのになぁ。あ、薬効き始めたから俺寝る。」

「うん、お休み。」

目を閉じて遼は健やかな寝息を立てていた。幸村も便乗して布団に潜り込む。柳は溜め息を吐いて、見舞いの品をペットボトルだらけのテーブルに置き掃除を開始した。


佐々木から弱音を聞いた事が無い。コンプレックスは聞いたが、羨ましいとしか言わない。さして努力を必要としない天才肌。憎らしいくらいに恵まれた肉体、それ故に飽きっぽい。貪欲に何かを求める姿を見てみたいものだ。佐々木とて情熱はあるだろう。どれ程の時間をかければ、見せるに能う存在になれるか。関東最強の名はいつまで続くのか。興味は尽きない。

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