文句あんのか | ナノ
猫は騎士になれない


恋しい恋しい俺のチェシャ猫さん。見かけても気付いてくれないアリスはどうしたらいい?

「遼…今日も君の夢を見たよ。」

愛しげにローズマリーへ語り掛ける幸村。…危ない光景にしか見えない筈が、幸村となると何故かナチュラルだ。

「俺も消えないから。遼も消えないで。優しい夢だったとしても醒めないで。」

切らなければ高く伸びるローズマリーは遼に似てる。クセのある香りなのに清々しくて強い。いくつも切っては植えて、意地でも枯らさないから。遼が誰を好きになっても、恋をしても俺の想いは枯れないから。月並みな優しさじゃなくて、遠まわしな優しさで支えてくれた俺の騎士。…遼の誕生日って、いつだっけ?血液型は?生まれは?…遼は聞かれなきゃ答えてくれないね…。記憶にずっと残り続ける、俺の最愛にして最強の騎士。

「…叶えてくれるかな、チェシャ猫さん。」

例えプロになっても傍に居てくれる保障なんてない。それに遼は空を飛ぶ鳥のように、自由でいて欲しいのに傍に居て欲しい。矛盾してるのにどうして?

「…そっか。遼は青学の生徒だ。自由な人じゃなかったら出会えなかった。」

女と間違えられてナンパされていたのを、一睨みで退散させてくれた。羨ましいくらいにカッコ良くて、その辺の男なんか歯牙にもかけない。青学の佐々木遼と名乗ってくれて…家まで送ってくれた。あぁいうバカは懲りねぇからバカなんだよって…年上だと思ってたんだ。遼。どう言ったら遼は俺を好きになってくれるのかな。大好きとか愛してるとか、絶対言う相手が間違ってるって頭を撫でそうだよ?でも俺にとっては一番大切な人。掛け替えのない、世界に1人の。

「遼は意地悪だからなぁ…テニスと遼、どっちも選べないや。」

テニスは生き甲斐で、遼は大好きな人なんだ。比べるなんて出来ない。でもそんな事を言ったら…遼は姿を消しそうで怖い。日本のどこかに居ると解っていても…二度と話せない気がするよ。独り善がりの押し付けるだけの恋。飛び回る遼にしてみたら迷惑。縛られたくないのも解るし縛りたくもない。何かに縛られた遼を見たくない。でも傍に居て欲しくて堪らない。

「気付いてくれるのかな?アリスの願いが変わった事を…。」

遼…どうして最近は顔を合わせてくれないのかな。神奈川にいる事は知ってるのに…用事が無きゃ来ないとは言っていたけど…。

「会いたいよ…。」

また手料理を食べに行こうかな。居なかったら街を歩こう。犬が棒に当たるより遼と会える確率は高そうだし。

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