文句あんのか | ナノ
尽くしてるよね


手塚は掃除をしながら、チラリとベッドで眠る遼を見た。暑さをこれでもかと嫌う遼はキャミと短パンで健やかな寝息を立てている。無理矢理起こそうものなら…あの世へご案内されそうだ。

「…いつまで、こうしていられるだろうか。」

「みっちゃん、何か言った?」

パチリと目を開けて遼は真っ直ぐ手塚を見た。

「起こしたか?」

「まぁな。」

伸びをしながらベッドから起き上がる遼にこれは気を許されているのか?と手塚は自問自答している。

「つーかさ、みっちゃん俺んちじゃなくて意中の女の子デートに誘うべき。」

「…何の話だ。」

遼は意地悪い笑みを浮かべながらアイスコーヒーを作り、悪戯っぽく手塚を見下ろした。

「タマゴから聞いた。恋患いだってな。当たって砕けるのも青春って俺の知り合いの人妻キラーも言ってたぜ。」

砕け散って暫く凹んだらしいけどな、と床に座り込みアイスコーヒーを飲む。

「…誰のせいだと思っている。」

「あ?もしかして俺とやたらに絡むから勘違いされてっとか?」

テニス部からは重宝されている女子生徒除け、逆を返せば好きな子とも話しにくくなるオプション付き。

「それは違う。」

「へーぇ?みっちゃんって普通に近寄りがたいって評判だし、ある程度観察するタイプだから校内だと思ったのにハズレか。」

ガシガシと頭を掻く遼は頭の中で手塚が知っていて、尚且つ好みの女の子を考えている。

「…その時が来たら、教える。」

「何十年越しになるかな。みっちゃんそういうの苦手だし。」

グイッとアイスコーヒーを飲み干して、グラスを台所へ持って行く。スラリとした体に、日焼けた肌。手塚は幾度触れたいと考えただろうか。手や腕を掴んだ事はあっても、そういった考えで触れた事は無かった。

「佐々木は…好きな人がいるのか?」

「大概の奴は嫌いじゃねぇな。結構嫌われてっけど嫌いじゃねぇ。サナゲンとあかやん超好き。面白いんだあいつら。」

そういう話じゃない。言いかけて手塚は留まった。遼は自分の色恋に興味が無い…いや無縁だと思っているのだ。パカッと携帯を開けて、寝ていた間の情報を次々に頭に叩き込む。凄まじい情報量だ。

「佐々木…髪に埃が付いているぞ。」

「一通り確認したら風呂入るから気にすんな。」

「少しは気にしろ。」

溜め息を吐いて埃を取る手塚。遼が風呂に入っている間掃除に励む手塚だった。

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