文句あんのか | ナノ
嘘ではないが?


「佐々木遼…」

ざわざわと騒がしい全国大会会場。悠々と歩く遼を避けるように道が開く。一部の人間を除いて。

「さぁて…ジイ様を伸した連中の面でも拝むか。」

サングラスをかけていても存在感が絶大な遼は凄まじく目立つ。整った顔にスラリとした体格。いくら見目麗しい男が多い大会でも、ジャージを着ている。

「おや、みっちゃんって事は大将戦か。ちょいと遅れたな。」

俺よりデカい珍しい男を見に来たのになぁ、とのんびり見物する。

「あ!佐々木先輩!!」

「よ、ホリー。この様子じゃ勝ちは決まって消化試合か?」

軽く手を挙げる遼は堀尾を見た。冷たい汗が流れるのは仕方がない。

「はい!」

「みっちゃんの相手は…木手か。残念だな、みっちゃんの勝ちだ。」

「部長ぉー!佐々木先輩が勝利宣言してくれましたよ!」

チェンジコート、と手塚は遼を見た。立ち姿さえ威圧的な遼は比嘉の面々を見ている。

「佐々木が来るとはな。槍が降るかもしれないな。」

「誰です?その佐々木とは。」

「喧嘩は関東最強の問題児だ。」

試合が終わり、遼は比嘉の連中に近寄った。

「ふぅん、結構でけーな。」

「やー、わったーに用だが?」

「用はねぇな。面拝みに来ただけだ。勝つ為なら手段を選ばないって聞いてな。興味本位さ。」

「佐々木!厄介事はここで起こすな!」

「みっちゃーん、俺そんなに信用無い?もう帰るって。傷に塩擦り込むなって事だろ?」

「なら、早く帰ってくれ。大石の心痛が増える。」

「へいへい、部外者は帰りますよー。」

踵を返し歩き出す遼の腕を木手が掴んだ。

「何か用か?俺はもうミッションコンプしたぜ?」

「勝利宣言をした、と聞いたので。どういう根拠です?」

「情報さ。レンちゃんとかサダみたいに確率ははじき出せねえけど推測は可能だからな。一種のギャンブルだ。俺が言う事全てが真実と信じきってる一年を悪く思うなよ。」

腕を振り払い、遼は歩き出した。

「私は木手永四郎です。あなたは?」

「佐々木遼。青学三年。テニス部関係者じゃねぇからな。」

立ち止まってサングラスを外し、木手を見据えた。

「っ…。」

ゴクリ、と木手の喉が鳴った。暑さの所為では無い汗が伝う。

「じゃあな。二度と会う事も無いだろうよ。」

シャツにサングラスを引っ掛けて今度こそ遼は立ち去った。

「何者だ…?」

ただ者ではない。そう、木手は思った。喧嘩は関東最強の問題児。


テニス部関係者ではないと言いながら、絶大な信頼を寄せられている。青学の切り札なのか?槍が降るかもしれないとはどういう事だ?謎が多すぎる。あの長身ならば強いと思っていいだろう。…調べてみるか。

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