文句あんのか | ナノ
悪友と呼べる人
ふらりとやって来た遼はのんびりと携帯をいじりながら街を歩く。
「久しぶりじゃのぅ、遼。今日はどうしたんじゃ?」
「お?久しぶりまーくん。今日はちょっくら気が向いてさ。」
特にコレと言う用事は無いと正直に言う遼を仁王はライバル視している。騙すのではなく、さり気なくレールを敷いていく手腕。
「なら、ちょっと付き合ってくれんかのぅ?」
「まぁたテニスのお誘いか?やんねえって。」
「ハズレナリ。お前さんにラケット持たせたら血の雨が降るぜよ。」
「んじゃ何だよ?」
携帯をポケットにねじ込んで遼は仁王を見下ろす。
「行ってからのお楽しみじゃ。」
「じゃー行ってらっしゃーい。」
手を振って遼は駅に向かおうとした。つい、行って来ますと言いかけた仁王が慌てて引き止めたのだ。
「冗談ぜよ!遼と遊びたいだけじゃ。」
「…は?確かに俺の情報じゃまーくんフリーだけど部員だのファンのお嬢さんだのいくらでもいるだろ。その辺で逆ナンしてる女子高生とか。」
「身も蓋もないのぅ…顔ばっか見とる連中なんぞ飽きるナリ。」
「へー。意外と遊んでんだな。いい話聞いたぜ。」
しまった、と仁王は悔しげに遼を見た。クックックッと遼は笑っている。
「詐欺師の名が泣きそうじゃ。」
「上には上がいるってこった。つーかこんなん騙した内にも入らねえだろ。やるなら徹底的に、な。」
それに俺は聞いてねえから自爆だろーと笑い続ける遼を恨めしげに見るしか出来ない。
「ほんにお前さんは…タチが悪か。」
「真面目くさった連中はからかい甲斐があっからな。ホント飽きねぇ。」
「それで真田と赤也に嫌われとるんじゃろ。」
「だってあいつらすげぇ反応面白いじゃん。」
否定できない仁王。真に受けすぎる2人だから。
「毎回茶化しとるワケでもないしのぅ…。」
「いやぁ解ってくれて嬉しいよ仁王君。」
ポン、とにっこり笑って仁王の肩を叩く遼。
「…とりあえずお前さんに優等生キャラは似合わん事がよく解ったぜよ。」
「だろ。突然爽やか系の性格とか俺が無理。」
「見た目でアウトナリ。」
「わーってるよ。んじゃ俺帰るな。まーくんいるってこたぁサナゲンとあかやんに会うかもしんねぇし。生徒会長君から半殺しは止めてくれって土下座されてんだ。」
「遼の人脈は謎じゃ。」
「知り合いが多いだけだって。」
ひらひらと手を振って遼は今度こそ駅に向かった。
「遼…。」
お前さんに、友達と呼ぶ奴は居らんのか?小さな呟きは喧騒に吸い込まれた。
何でじゃろうな、お前さんは悪くはないとに周りが勝手にお前さんを作り上げて勝手に怖がっとる。目つきが悪くて背が高い、最初はそれだけじゃった。馬鹿力もあるんじゃろうな。お前さんに近付けんもんかのぅ…。強くなりすぎじゃ。
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