文句あんのか | ナノ
お土産の定番名産品


手塚が九州に行く。その話は遼の耳にも当然入ったが遼や手塚は全く変わりなかった。

「明日、九州へ発つ。」

「行ってらっしゃーい。お土産は辛子蓮根(熊本)と芋焼酎(鹿児島)と明太子(福岡)とカステラ(長崎)と」

「幾つ頼むつもりだ。」

「頼めるだけ。みっちゃんマジで全部買ってくるか賭けるかなーって。」

ニッと笑う遼はかなりあくどい笑みにしか見えない。

「九州全土駆け抜ける予定は無い。」

「だって九州のどことか聞いてねえし。」

「宮崎だ。」

「…日向夏と地鶏ぐれぇか?サーファーの知り合いがいい波が来るとかなんとか。」

「…県庁の写真でも撮るか?」

「いやだったら知事の生写真が一番売れるだろ。」

「転売目的か。」

「人聞きのわりぃ事言うなよ。もしかして会えなくて寂しいとか乙女な発言俺に要求すんの?」

「…鳥肌ものだな。」

「今生の別れじゃあるまいし。ま、俺ぶっちゃけいつおっちんでもおかしくねぇ生活してっけど。」

「お前はそういう冗談にならない事をあっさり言うな。」

「今更だろ。ま、心置きなくクソ暑い九州で暑苦しく青春目掛けて突っ走るのも経験だろ。」

「そう言われると行きたくなくなる。」

「おやおや、部活の為なら腕一本ダメにしたがるみっちゃんらしくねぇな。」

「…茶化して遊んでいるだろう。」

「みっちゃん鈍感。やっぱ頭かったいなー。」

ゲラゲラ笑う遼を後にして手塚は九州へ向かった。

「…確かに、俺らしくないな。」

毎日会ったり手料理を食べたりしている訳でもないのに、こうして離れるとどこか物足りない。

「…遼…。」

ロマンスの一つでも見つけて来いよ?と茶化して笑っていた遼の言葉が耳から離れなかった手塚。

「全く…放って置けるか。お前のようなバカを。」

関東最強と呼ばれようと、遼はいつか負けると言い切っていた。荒事のプロフェッショナル、常に凶器を持ち歩かないでその身一つで喧嘩に明け暮れる。

「会えなくて寂しいのは俺だったな。」

絶対に遼の前では言えない事。確実に爆笑される。

手塚は知らない。遼が1人で動き回る理由、孤独を嫌うからあっちこっちを歩き回るのだ。

敢えてテニスの事には触れない遼は果てしなく不器用な優しさを持っていたのだと改めて実感している手塚だった。

今日の日記から抜粋

怪我を恐れては勝利を掴めない。あいつは身を以て語っていたのだ。不器用と俺を笑うが、あいつも相当な不器用だろう。早く、あいつに会いたい。離れて初めて、どれだけあいつが大事だったのかを思い知った。

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