文句あんのか | ナノ
今すぐ逃げたいよ
何気なく道端を歩いていたら、杏に呼び止められた。
「お姉様!」
「…人違いだろ。」
確かに自分は女だがお姉様などと呼ばれるご大層な人間ではない。ふいと歩き出した遼はまた裾を掴まれ見下ろすと、杏が怯えながら見上げていた。
「…何?」
「兄貴…お兄ちゃんの彼女になって下さい!」
「やつぁ拒否る気しかしねぇぞ…?」
ライオン大仏こと橘は遼を警戒しまくっている。遼はからかって遊んでいる。
「…知り合い?」
「おう。前の顧問、ありゃ俺の仕業だ。」
「なら、お兄ちゃん絶対遼さんの事好きよ!」
「…杏ちゃん、少女マンガ読み過ぎじゃねぇ?」
もしくはドラマ見過ぎ。一般的には逆だし。と言っているにも関わらず杏は兄を呼びつけた。
「佐々木…テメェ杏に何しやがった。」
「オイオイライオン大仏、俺は何もしちゃいねぇよ。道端歩いてたら犯罪か?」
両手を挙げて遼は笑う。橘は睨んでいる。
「なら、杏はどうしたんだ?」
「遼さんにお姉様になってもらいたいの!」
橘の思考が一時停止した。
「ほら見ろ。全身全霊で拒否ってんだろ。」
「違うわ、きっとお兄ちゃんは自分から言い出せなかったからこうなってるのよ!」
「ますますドラマっぽさ倍増してんじゃねーか。」
「杏…そいつが誰だか解って言ってるのか…?」
「佐々木遼さん。青学の三年生よね。」
「こいつは関東最強の喧嘩好きで情報屋みたいな事やってんだぞ?自販機だのコンビニのゴミ箱投げるバケモノだぞ!?」
「いやライオン大仏。喧嘩好きは間違い。買ってるだけだって。」
パタパタと手を振る遼。実際売ろうものなら、その前に撃沈させてしまう。
「あ、噂の佐々木遼さんって同一人物だったんだ。」
「杏が危なすぎる。」
「ライオン大仏って結構シスコンだったんだな…いやはや新発見。」
「と言うか男だろ。佐々木は。」
それに杏は首を振って
「女の人よ。ちゃんと胸あるもの。」
「まな板だからな、どこぞの男装の麗人みてぇにサラシとか要らねえ。」
貧血しんどいけどいつもの事。あっさり言い切る2人に橘は顔が強張った。
「…俺は佐々木みたいな男女はゴメンだ。」
「ほらな、俺は男受けしねぇんだよ。やたらと女の子にはキャーキャー言われっけど。」
「遼さん…。」
「ほらほら泣くなよ。女の子は笑顔がキレイなもんだぜ?」
あやすように杏の頭を撫でる遼。
「遼さんが男だったら…押しかけたのに!」
「杏!?」
杏の野望、遼と橘をくっつける。そう決めていた。
- 74 -
[*前] | [次#]
ページ:
メイン
トップへ