文句あんのか | ナノ
妙なとこ普通


する事が無い日は、学校に行く。それが遼の唯一判っているパターンだ。

「ふぁ〜ねみ。みっちゃん俺次サボリな。」

「…あぁ。」

手塚が頷いた!?と最初は誰もが驚いたが一回引き止めようとして腹に一発入れられた過去を知る者は何も言わない。触らぬ遼に祟り無し。屋上でスヤスヤと眠る遼は手塚ほどにではないにせよ、大人びて見える。

「…遼先輩。」

「どーしたリョマたん。」

完全に寝ていると思って越前は呟いたのだが目を開けて遼は見た。

「…起きてた?」

「普通に寝てたぜ。気絶でもしなきゃ起きるっつーの。」

寝坊しがちな越前には羨ましい話だ。すぐに起きれるのだから。

「昨夜俺んちの近くで自販機投げたらしいッスね。」

「あぁ、投げた。もしかしてそこでよくファンタ買ってたか?」

「まぁ…そうッスね。」

真偽は定かではない、と思っていたが千切れたコードやひしゃげて転がる自販機を見たのは真実だ。

「まぁ、今日中には新しいの入ってるだろうな。俺があれこれ投げるのよくある話だ。」

「投げるモンが非常識ッスよ。」

それに遼は笑った。

「今更だな。」

「ホント最強ッス。」

スポーツやったらあっという間に頂点に立ちそうだと越前は思う。

「最強なぁ…マジメになんかやるとか考えねぇぞ?」

「それだけバケモノって事ッス。」

「器用貧乏ってヤツか?俺は特に希望とかねぇし。一芸に秀でてるワケじゃねぇもん。」

その気になれば何だって出来そうだが、頂点は無理だと言外に告げる。

「自販機投げるのは真似出来ないッスよ。」

「鍛えりゃ出来んじゃね?俺は腹筋以外なんもやってねぇけどさ。」

「無理ッス。」

「自分で限界作るのはいただけねぇなぁ。夢はでっかい方がいいんじゃね?」

「少なくとも部長を一撃で沈める馬鹿力は絶対無理ッス。」

「みっちゃんアレトラウマになってっからな。リョマたんも充血した目がトラウマだし。」

「…にゃろう。」

「ナンジーに教えてやろっかなー。」

クックックッと笑う遼を悔しげに越前は睨んだ。父親以上にやりづらい相手だ。弱点なんて無さそうで、それ以上に握られている情報は計り知れない。

「遼先輩って苦手なモンとかあるンスか?」

「乾汁。」

いやそれは普通すぎだ。平気な人間は居ないだろう。

「他には?」

「んー、女扱い?慣れねぇからな。」

その見た目で出来る男が居たら拝んでみたいものだ。似合わない。

「さーて、みっちゃんにノート借りるか。じゃーなリョマたん。」

チャイムと共に遼は去る。越前は次もサボろうと日陰に入った。


遼先輩って…ホント最強。あれで女なんだから。カッコ良すぎ。どうなったらそうなるんだよ。俺もまだまだだね。オヤジを超えたら遼先輩を超え…無理。バケモノだし。怪獣だって。

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