文句あんのか | ナノ
反応に困る告白


杏は息を切らせて遼のシャツの裾を握った。

「やっと見つけた…私の運命の人…。」

それに遼は妙な顔をして杏を見下ろした。

「あ、ライオン大仏の妹ちゃん。悪いんだけど俺女だぞ?」

ピシッと杏が固まった。雑誌で一目惚れをしたのに、女?と思考がグルグルと巡る。

「やっぱなぁ…この手の一目惚れとか増えたな…。」

杏はかなりの勇者だ。いくらカッコ良くても遼の雰囲気は危なすぎる。危ない男に惹かれる女もいるが、遼の場合本能的に怖がるものだ。噂もプラスされる。

「佐々木遼さんは…女の人…?」

「ついでに青学三年。自販機投げるので有名だろ。」

「杏ちゃん!佐々木さんは女で危なすぎるから離れてっ!」

神尾が目敏く駆け寄って杏を引き離した。

「なぁリズムあっちゃん。女の子に運命の人呼ばわりされたらどうしたらいいんだ?」

喧嘩と違って殴る訳にもいかねぇし。そうして見下ろす。

「佐々木さん…俺イジメて楽しいですか?」

ポン、と手を叩き遼はサラリと

「あ、そーいやリズムあっちゃん」

「言わないで下さいっ!」

「神尾君…佐々木遼さんって本当に女なの…?」

未だに思考が纏まらない杏は神尾を見る。

「…うん。制服も見た。」

「ついでに学生証も見せたよな。」

「…そ、う…。」

うなだれる杏。運命の人が女だったなんて、と思わずにはいられない。

「そっちの気も無いからな。色恋沙汰は巻き込まれっと厄介だし。」

「佐々木さんって修羅場慣れしてそうですけど。」

「おーい。俺中学生だから。加えて見た目と性別間違ってっから。」

「橘さんよりデカい女とか日本人離れしてます。」

「なら自販機投げるのは外国人ならオッケー?」

「すいません間違いました人間離れしてます。」

傍から見ていると、女の子を巡って馬鹿でかい強面イケメンと背の低めな少年が話しているようにしか見えない。しかも少年押されがち。

「つーかさ、俺の声そんなに低いか?」

「声変わり中に思えます。」

色気があればハスキーヴォイスで魅力的なのだろう。

「杏ちゃん復活しねぇなぁ…そんなに衝撃的か?」

「かなり衝撃的です。佐々木さん俺よりかなりカッコいいんですよ?」

「目つき悪いって昔から言われてんぞ?」

「あ、俺もいいとは言われないんで。」

「そりゃ遺伝だろ。よくあのクソッタレの下で延々ボール拾いしてたよな。」

「それは…佐々木さんにすげぇ感謝してます。」

「気が向いて害虫駆除しただけだって。んじゃ後ヨロシク。俺ちょっくら用事あっから。」

「はい。気を付けて下さい!」

悠々と歩き出した遼を神尾は見送った。


やっぱ勝てない。スタミナもパワーもあって、メチャクチャカッコいい。男気って奴か?筋通って真っ直ぐ歩ける人になりたい。今度ダッシュ勝負してみてぇ。…勝てる気はしないけど。

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