文句あんのか | ナノ
鉄拳制裁は命懸け


山吹にやって来た遼。目的は勿論、千石をブン殴る為だ。

「あ、遼ちゃん…ひ、久しぶり。」

「久しぶりだなぁ、清純君よぉ。とりあえず殺さねえから一発殴らせろ。」

千石にとっては非常にマズい展開だった。確かに今日の占いは最悪。敵を作らないようにしましょう、とあったが既に敵に回してはならない最強の遼が笑顔で筋を浮かべている。蒔いたのは自分で、頼みの綱である阿久津は不在。逃げられないし逃げたら自販機が飛んできそうだ。

「な、何で…?」

「知らねえとは言わせねぇぞ?アレ以来会ってねぇからなぁ?」

心当たりがありすぎた。間違い無く雑誌に掲載された遼と千石のツーショット。千石はさほど影響は無かったが遼は女で、やたらと男前な顔だ。加えて高身長で男としては細身だが女性的な雰囲気は皆無。

「モテる男は辛いね…。」

「きーよーすーみーくーん?俺は女だぜ。まぁ面は殴らないでやる。骨一本ぐらい折れたって人間死なねえからなぁ?」

ゆっくり近付いて来る遼に千石は汗が止まらない。誰か助けてくれぇぇぇ!と思うのは仕方がない。しかし元凶は千石。言い訳が通用しない絶体絶命のピンチ。ラッキーの神様お願い!と思った瞬間千石はぶっ飛ばされた。

「おー飛んだ飛んだ。腕力上がったか俺。」

「遼、ちゃ…容赦…な…い…。」

「手加減してやるたぁ言ってねぇだろ。やった事ねぇし。」

ズキズキと痛む腹を押さえながら千石はよろよろと遼に歩み寄る。人の垣根は散っていた。

「ガフッ!…救、救急車を…呼ん、で…。」

「善良な山吹の連中は居ねぇぞ。」

冷たく見下ろす遼は恐怖そのもののように見える。

「千石!?」

「おやおや、良かったなぁすーさん。拾う神あり、だな。ラッキーなんじゃねぇの?」

駆け寄ったのは南だった。遼を見た瞬間、睨むどころか息を呑んだ。凍てつくような目は今まで見て来た遼とは思えなかった。

「俺の用は終了。けんた、後は頼んだぜ?」

「…あ、あ。」

踵を返し、悠々と去って行く遼を南は見送らず、救急車を呼んだ。内臓を痛め、肋骨に何本かヒビが入っていた。助からない怪我ではなかったのが救い。

「何だ…手加減、してくれたじゃん…。」

「千石。あれだけ敵に回したくないと言っていただろう…。」

「遼ちゃんの本気、見たかったんだ。見せてくれなかったけどね…。」

「千石、見え透いた嘘は止めろ。命懸けだろう。」

「ちょっと、迷惑かけちゃったからさ。仕方無い。」

その気になれば、遼ちゃんは腕へし折るし。そう言って千石は目を閉じた。


関東最強…佐々木遼。力は底知れず、阿久津すら敵う相手ではないと噂がある。ただ目つきの悪い奴じゃなくて、バケモノだ。からかうのも楽しいからで、正直な人間。…ますます、敵に回したくない。どうなるのか判らないが、命懸け。味方にするには…難しい。程良い距離で関わりを保つしか手段が思いつかない。

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