文句あんのか | ナノ
イケてるメンズ
「おっしー…。」
げんなりとした遼は忍足の家にやって来た。
「お?今日は打撲か?」
「いやちげーよ。コレ見てみろ。」
遼が開いた雑誌には千石と遼のツーショット写真がでかでかと載っていた。
「明るい爽やか系とちょい悪系イケメン…どんまいやなぁ…。」
「俺一生男として生きていく方が楽な気がしてきたぞ…。中学生高校生からナンパされないけどお前らの気持ち3分の1くらい解る気がする。」
「遼は長身の強面イケメンに見えんもんな…。まぁ上がり。飯作ったる。遼程美味くはあらへんけど。」
動きづらくなったじゃねぇか千石のバカ野郎…などと呪詛にも似た殺意表明を宥めながら忍足は食事を作っていく。
「なぁおっしー。瀕死にしてドラム缶に放り込んで灯油ぶっかけて焼いたら大丈夫か?」
お好み焼きと白米と味噌汁と言う…何とも言えないチョイスの食事をしながら遼は呟いた。
「せやなぁ、焼いたら指紋つかへん…って何片棒担がせようとしとんのや!」
「誰とは言ってねーだろ。やーいおっしーの早とちり。」
これ出汁使ってんのか?と味噌汁を啜る遼は眼光の鋭いイケメンに見える。実際は…パックリ切られなければ絆創膏や湿布で済ませる人外代表だ。
「え?味噌に出汁入りやって書いてあったで?」
「オイオイおっしー、いりことか鰹とか昆布の存在忘れんなよ。お手軽なのはいりこだな。本格的なら鰹。アレは大変だ。」
「遼って…普通の女の子やったらえぇお嫁さんになれるわ言えんねんけどなあ…。」
哀愁を漂わせながら忍足はしみじみと遼を見た。女らしさゼロ。
「足フェチに言われたくねぇな。」
「見た目がもうちょい女の子やったら遼は理想やねんけど。」
「お前の理想像ってハードル高いな。スーパーモデルの嫁さん理想かよ。」
「あ、身長は俺よりちょい低めや。」
大概ちっこいけどなー。とまだ見ぬ理想の彼女に思いを馳せる忍足。
「んで自販機投げて平気な女とかいねぇよ。」
「遼…自分規格外すぎんねん。自販機やらゴミ箱やらポイポイ投げる女がゴロゴロ居ったら俺非力やん。」
「がっくんとか慈郎丸に比べたら強いだろ。」
「そら身長の関係や。遼は怪力やねん。男投げるとか普通無理や。」
「すげぇ今更だな。ちなみに変な実験とかトレーニングとか全くやってねぇから。」
「鍛えたんは腹筋だけなん…?」
「おぅ。ちったあ身長伸びるの止まんねえかなってさ。」
忍足は恨みがましく遼を見つめた。顔だったら負けない自信がある。だが身長や運動は遼の方が遙かに上。
「自分今全国の身長が伸びんで悩んどる人達敵に回したで。」
「勝つぞ?」
「…殴り合いやったらな。後は脅迫やろ。」
のんびりと食事を楽しむ2人。その後遼から調理を習う忍足だった。
ホンマは、怪力やなかったら襲っとるんやで?無防備に見せかけて警戒を解かん猛獣やし。あのほっそい足で跡部を庇った樺地の肋骨折った時はビビったけん、こうしとると普通や。…怖くあらへん言うたら嘘やけどな。
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