文句あんのか | ナノ
結果が気になる
「はぁ?スポーツテスト?やるわけねーじゃん。」
乾が珍しく家にいた遼に尋ねたが一蹴された。人智を超えた異常な数字が出るのは間違い無い。
「データを取りたかったのだが。」
「サダ。俺間違い無く握力測定不能だぞ。ほれ、菊猫オススメ俺手製オムライス。」
ひょいと置かれたオムライスは香りもさることながら美しい。食欲をそそる。
「見た目を考えなければ家事全般出来る…いや性格が無理だ。」
「つーか掃除出来るけど嫌いだから。部屋見りゃ一発だろ。」
山積みの雑誌にペットボトルや缶が散乱し、血痕がカーペットに残っている。遼はマンションに一人暮らし同然だ。父親は海外に居るのだから。
「メンズ雑誌ばかりだな。」
「サダ…俺がティーンズ女の子向けの雑誌読んでるのイヤだろ。あんなヒラヒラしたの着るか。」
「身長自体規格外だからな。体重は身長に見合っているがつくづく男にしか見えない。」
パクッと乾はオムライスを口にした。正直に美味。絶妙な味わい。
「不味くても文句言うなよ。飯作ってやっただけ感謝しやがれ。」
同じく当たり前にオムライスを食べる遼だが、食べ方まで男っぽい。要は、品が無い。しばしの沈黙。
「美味かった。菊丸が褒めるだけあるな。」
「インターネット様々だな。書いてある通りに作れば失敗しねえし。」
身も蓋もない。しかし奇跡的な遭遇率だ。遼は大概どこかに出掛けては、喧嘩に情報集めにあっちこっち行っている。どんな怪我をしていても。
「教授が新しい情報を掴んだから気が向いたら来て欲しいらしい。」
「俺相当かなりあかやんとサナゲンに嫌われてんだけどな。」
軽く肩を竦める遼だが二年以上知っていればある程度意図は解る。理解できるように遼が振る舞っているのかもしれない。
「気にも留めないクセによく言うな。」
「今度は制服で行ってやるかな。絶対ビビるぜ。」
「きっちり着ていると効果は絶大だな。」
デザート、と新発売のヨーグルトを手渡され乾は眼鏡を輝かせた。
「たりめーじゃん。サナゲン俺の事まだ女だって認めてねぇし。」
「私服が高校生のようだからな。」
「老け顔ズはホント頭かってぇしな。みっちゃんもサナゲンも。いまだかつて見抜かれてねえし。」
「体の細い男にしか見えないからな。」
「せーぶつ学じゃ女なのにな。昔っから男扱いだし今更女扱いされても鳥肌モンだ。」
「自分より背の高い男にしか見えない女にそんな事をする男は3%だ。」
「寧ろ限り無くゼロにしたいぐらいだ。ユキチャンに王子様呼ばわりされたんだぜ。」
「…佐々木にそんなカテゴリは必要無いだろう。佐々木は佐々木でしか無い。」
それににやぁと遼は笑い
「おぅ。サダのそーゆーとこ好きだぜ。」
「散々チビだチビだと言われたが結局抜けなかったからな。せめて友人と呼ばれたい。」
そんな懐かしい思い出に浸る乾。入学式でたった一人異彩を放つ長身は羨ましくて仕方がなかった。
お前の友人には、どうなったらなれるんだろうな。データも取りづらい上に、パターンも滅茶苦茶で天気よりも変わりやすい。
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