文句あんのか | ナノ
優しさの中に犯罪
「お?ようしっしー。髪切ってイケメン度アップしたんじゃね?」
古着屋で遼と宍戸は出くわした。
「佐々木…変な呼び方すんな。つーか何でお前が男物のジーンズ持ってんだ。」
それに遼は目をぱちくりさせ
「ロリータ持ってる俺とかかなりイヤだぞ。」
「…イヤだな。つーかまた伸びただろ。」
ボーイッシュ通り越して男にしか見えない遼。早く逃げろと宍戸の頭の中で警鐘が鳴る。
「少なくとも185越えた。これで顔も良けりゃモデルになれたな。」
なる気など更々無い、やる気の無い答えに宍戸は溜め息を吐いた。5センチでいいから分けてくれ、と言いたい気分だ。会話終了とばかりに服を物色する遼は視線が別の方向にあっても恐ろしい。
「…佐々木。腕どうしたんだ?」
左腕に赤黒い痣。遼はさらりと
「金属バットでやられただけだぜ。安心しろ、骨はいかれてねぇから。」
いてぇこたぁいてぇが気にしねぇと言い切るのだからタチが悪い。女だと知っても男扱いが抜けない。中学生なら、知らない奴は居ないんじゃないかと言われる知名度。生半可な事ではない。
「怪我してまで何がやりてぇんだ?」
それに遼は考え込んだ。
「んー。単に売られた喧嘩買ってたらこうなってたからな。情報屋紛いもやってっし多少危ない橋も渡ったし…単なる意地かな。俺だってアホらしいとは思っても売られたら買いたくなんだ。」
下手な男よりも根性の据わった遼は、強すぎる。色んな意味で。
「意地か…なんか解る気がすんな。」
「しっしーも意地でレギュラー復帰だもんな。祝いに何か買ってやろうか?チーズサンド作るだけじゃつまんねえし。」
ピクッと宍戸が反応した。何故知っている、と。
「しっしー、顔に出やすいな。俺は情報屋紛いやってんだぜ?あんま役立たないけど弱点握るついでに聞いちまっただけだ。」
サイズを確認しては戻す作業を繰り返す遼は一見ただの男子高校生に見えない事も無い。
「じゃ、じゃあ何かオススメねぇか?」
「俺のお下がりで良けりゃ一点モノジーンズとかあんぞ。丈が短いから着てねえし、欲しけりゃやる。」
そこまで知っているのかと宍戸は内心頭を抱えた。
「い…いる。」
「おっけー。俺んち行くか。」
会計してくっから、と姿を消した遼を見送り、宍戸は手を握り締めた。怖い。手を出さなければ無害だと知っていても…。
「何ボサッとしてんだ?行くぞー。」
肩を組まれて宍戸は遼の家へ向かわされた。夕食まで振る舞われ。
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