文句あんのか | ナノ
現代の鬼神


血をポタポタ落としながら遼が向かうはあとベッキンガム。肩を打ち抜かれ、ジャケットで縛っているがかなりのダメージだ。

「佐々木遼だ。忍足侑士に会いに来た。」

「少々お待ち下さい。」

一辺倒の返事に苛立ちを隠さない遼はシャレにならない程怖い。筋が浮いているから三割り増しだ。

「どうぞ、こちらです。」

「いいのか、血ィ流してんのに。」

「坊ちゃまよりお許しが出ております。」

またまた同じような答えで返され、その辺の像でも投げてやろうかと思う遼。今日の機嫌は最悪だ。

「どうぞ。」

「遼!?どないしたんその血!」

「見りゃわかんだろ。肩ぶち抜かれた。致命傷じゃねぇ。腕の悪い狙撃手雇いやがったんだよ。」

血相を変えた忍足は機嫌が悪い事を察知して、跡部に頼み即手術。致命傷ではないと言い切った遼の言葉通りに、出血は多いが機能に問題は全く無かった。

「本当に女だったのか…。」

「今更だな、けごたん。部分麻酔しやがって。動かねえぞ。」

「遼、当たり前や。ついでに上も下も血ィ流しよって貧血やし。」

「しょーがねーだろ女なんだから。麻酔無くても耐える根性はあるんだけどな。何日大人しくしてりゃいいんだ?」

「普通は一週間や。」

「つーこた3日か。けごたん、何の情報が欲しい?」

「…お前、人間か?」

「多分な。母親の面は拝んでねぇけど、オヤジとは血縁間違いねぇ。」

オヤジか母親がバケモノだったら俺もバケモノだ、とあっさり答える遼。

「よぉ言うわ。親父さん顔ごっつおっかないのに全然性格似とらんやん。」

「オヤジは甘すぎんだよ。親バカどころかバカ親だ。あれで役員候補なんざ笑っちまう。」

機嫌が些か直ったらしく軽口を叩く。筋は浮いていない。父親はニューヨーク支部長、それなりに偉い人なのだ。

「にしてん、何で機嫌悪いん?」

「おっしー知らねえの?あんだけ遊んでて。」

それに納得した忍足。女の体は何かと面倒だ。

「今日は泊まれ。部屋は準備させてある。」

「けごたん、俺の機嫌悪い事解ってて言ってんのか?片腕でもけごたんぐらい投げんぞ。」

再燃。忍足は跡部を宥めている。完全に目の据わった遼を刺激すると命の危険を伴うのだ。

「…撤回する。泊まっていくといい。佐々木を敵に回したくはない。」

「そりゃどうも。何かさ、今すぐ食えるもんある?無けりゃいいけど。」

「茶菓子ならある。」

差し出されたまだ温かいクッキーに遼は手を伸ばす。空腹も苛立ちの原因だ。

「わりぃな。んで、何が欲しい?俺は却下。」

「確約して欲しい。…どうしようもなくなったら、いつでも来てくれ。」

「本気か?めったにやんねえけどさ。」

「俺は正気で本気だ。」

「了解。」

暫くの間、談笑して各々の部屋で眠りに就いた。


佐々木…俺はムカつくぐらいイヤミな奴だとしか思ってなかった。とんでもない情報通で、男にしか思えない…でも、人間で女だと認識した。ただ、見せなかっただけだった。ガキっぽい執着。欲しい。遼の全てを手に入れたい。必ず。

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