文句あんのか | ナノ
小学校以前の問題


千葉。何があるのかと言えば夢の国が第一に挙げられるだろう。だが遼は海岸に居た。セットされた無造作ヘアが潮風に靡く。目を伏せていれば大層麗しい美青年だ。

「あ、遼さん!」

部室から出て来た葵が目を輝かせて駆け寄った。

「おひさ、モテない剣。」

「う、モテないとか言わないで下さい…遼さんみたいにカッコいい人に言われるとキツい。」

「じゃあ俺が口説いてやろうか?俺女だし。」

苦笑していた葵が固まる。それに気付いたのかメンバー達が集まってきた。

「佐々木く〜ん?何言ったんだよ。」

首を傾げて佐伯が遼を見上げた。

「事実だぞ?俺が女だって。」

「…男じゃないの?」

やれやれ、と溜め息を吐いて遼は復唱した。

「俺のダジャレより笑えないシャレ…。」

「いやダビデのダジャレは寒い。」

「そりゃな、この面子の誰よりも俺はデカいし殴り合いなら負けねぇぞ。でも女だ。」

何でわかんねえかな?と見渡すと全員が冷や汗をかいた。睨まれたら終わりだと言わんばかりに。

「佐々木…マジ?」

「トラジ…。俺がんな信憑性ゼロの話するわけねぇだろ。何なら確認したいか?色気もへったくれもねぇ体だけど。」

佐伯の言葉に呆れ果てた遼は口だけで笑った。

「クスクス、確かに遼は裏付けされた情報は売るもんね。」

「当たり前だろ?情報ってのは本物だから売れるんだよ。つーわけで俺が女なのはマジだ。」

「遼さんが、女…自販機投げるのに…?」

「アレ結構疲れるんだぞ?その辺に誰か居なかったら投げるしかねぇだろ。」

「自販機を投げて自慢気…プッ。」

「よしあまねん。右か左か選ばせてやる。」

「ま、待った待った!一応レギュラーなんだよダビデは!」

と言いつつ黒羽は天音に蹴りを入れた。

「知らなかったの〜?」

「オジイ知ってたの!?」

血相を変えるメンバー達。

「見抜いてはいなかったけどな。ちょいと俺個人の情報教えてジイ様に聞いたんだ。」

何を、とは言わないのがミソだ。

「秘密が多いのね〜。」

「単に勘違いしてただけだろ?俺は男なんて言った記憶ねぇよ。」

「遼さん!俺は卒業までに遼さんより絶対でっかくなる!」

びしぃっ!と遼を指す葵に溜め息を吐いて

「モテない剣…小学校で習わなかったか?人を指したらいけませんって。」

「人を叩いたらいけませんって佐々木は習わなかった?」

「トラジ、俺は叩いた事は無いぞ?殴るけど。」

「あ、確かに。平手打ちとか似合わないな。」

他愛ない会話をして遼は海遊びをやるだけやって帰った。

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