文句あんのか | ナノ
民主主義国家ですよ


ミッション系の聖ルドルフは、遼に相当似合わない学校の一つだ。そもそも学校の似合う見た目ではない。迷わず遼はテニスコートへ向かった。

「おっひさーよっしー。」

「うげ、佐々木。…久し振りだな。」

嫌われようが構わない遼はあっさりスルーして強張った笑顔の赤澤を見下ろす。

「あ、やっぱ俺また伸びてんな。」

「何食ったらデカくなんだよ。羨ましいぞ。」

「やっぱ魚か?俺骨ごと食うし。」

「佐々木君、赤澤君、部活中にお喋りとはいい度胸ですね。」

スッと現れたのは観月。些か声のトーンが落ちていて赤澤は足早に戻った。

「バラミヅキ、俺女。」

「…はい?聞き間違いですかね。」

「だから、女だって。まな板胸だけど。ゆうたんに聞いてねえの?俺前から有名人だったぜ?」

「キミが女のハズが無いでしょう!有り得ない筋力に身長!女だったら分けてほしいくらいです!」

「あ、遼先輩。ご無沙汰です。相変わらず男前で。羨ましいッス。」

観月の声にいち早く反応したのは裕太だった。キラキラと目を輝かせ遼を見上げる。

「おっひさーゆうたん。バラミヅキが俺の事女だって信じねぇんだよ。」

「遼先輩はカッコ良すぎるから。本気で羨ましいッスよ。あ、そういやこないだ出来たケーキ屋、タルトが美味かったッスよ。」

「へー。噂じゃパウンドケーキが絶品って聞いたけどな。」

「アレは酒使いすぎ。誤魔化してるッスよ。」

「裕太君…佐々木遼は、女性なんですか?」

「はい。俺が転校するまで名前で呼んでくれたんです。俺がキレそうになった時に助けてもらいました。」

女に助けられて恥ずかしいけど…遼先輩は別格っすから。照れくさそうに言う裕太に観月は遼を見上げ

「本当に、女なんですか?」

「しつけーなバラミヅキ、俺は女だよ。制服もスカートだし何なら見るか?」

「いたいけな男子中学生の夢をぶち壊さないで頂きたいものですね。キミなら全国に通用するプレイヤーになれたでしょうに…。」

「ホントテニスバカだな…。呆れを越して尊敬できるかもしんねぇ。」

「いっそ男として我が聖ルドルフに来ませんか?」

「…性別間違って生まれた自覚はあるけどそりゃ無理だろ。俺の知名度考えてくれよバラミヅキ。賢いお前なら解るだろ。」

呆れたように観月を見下ろす遼に観月は悔しげに唇を噛み締め

「佐々木君が女だなんて…世界はなんて不平等なんだ!」

「おーいバラミヅキ。お前の方がずっと美人じゃねーか。」

「俺も遼先輩みたいにカッコ良くなりたかったッスよ…。」

「バラミヅキ、自分の世界入っちまったからさ、よっしーとかハチマキあっちゃんとかに教えてやって。んで反応見て笑ってやれ。」

にやぁと笑う遼に裕太は力強く頷いた。

遼先輩はカッコいい。男とか女とか抜きに、カッコいい。助けてくれた時は怖くて仕方がなかったけど、今は憧れだ。遼先輩みたいにはなれなくても、近付きたい。だから兄貴を超える。

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