文句あんのか | ナノ
橘さん逃げて!
「ちぃーっすライオン大仏。」
「佐々木…何の用だ。」
露骨に顔を強ばらせた橘は冷や汗を流した。
「某先生をブタ箱送りにした恩人様に素っ気ないなー。そんなんじゃ彼女出来ねえんじゃね?妹ちゃんに先越されたりして。」
茶化すように言う遼は戦闘モードに入るととんでもないと知っているだけに、悔し紛れに言い放った。
「お前に杏は渡さない。」
「ライオン大仏よぉ、いい加減気付こうぜ。九州二翼の名が泣くぞマジ。女だぞ俺。」
橘の思考が停止した。やっぱこいつもかよ、と思いながら軽く見下ろす遼。
「橘さん!?」
わらわらと不動峰一行が集まる。そして遼を睨んだ。
「殴りかかるなよ?手加減出来ねえから俺。殺しはしねぇが病院送り間違い無しだぜ。」
「佐々木遼…?」
鉄が呟くと視線が集まる。
「おぅ。正解。何なら適当な奴投げて証明してやろうか?自販機投げんの疲れんだよ。」
慌てて止めてくれと訴える橘以外。口元に笑みを浮かべて遼は頷いた。悪寒どころか恐ろしい笑み。本物だと誰もが確信した。
「佐々木さん…どうして橘さんは固まってるんですか…?」
恐る恐る神尾が口を開く。下手な真似をしたら危ないと思いながら。
「俺が女だって言っただけだ。戸籍もバッチリ女なんだけどな。制服もスカートだし。」
「冗談だろ俺よりかなり背が高いくせに女とかふざけて言う冗談じゃないだろ第一服装が男物じゃん。」
「ボヤキしんちゃん俺そんな冗談言わねえから。ライオン大仏も男だって思い込んでたみてぇだけど。」
伊武をボヤキしんちゃん呼ばわりする遼。ほら、と学生証を見せられ、固まる一同。
「ほんっと飽きねえなぁ中学生遊び。そんなに驚かれたら笑うしかねぇや。」
クックックッと笑う遼に悪意はバリバリある。黙っておいて真相をバラす。私服と制服にギャップがありすぎるからだ。
「つーかいつまで呆けてんだ?練習は?」
その声すらも届いていないようだった。最強と謳われる佐々木遼が女であるという事実。その衝撃は計り知れない。
「ライオン大仏ー?リズムあっちゃんー?あ、こりゃダメだ。暇だから遊ぼうと思ったのにダメージデカすぎたか。」
目の前で手を振っても反応できない不動峰一行。遼がスカートを穿かないのは単に似合わないのとサイズが無いからだ。制服も特注である。可愛らしい服を着ようなどとは思わなかった。目つきの悪さは天下一品、昔から背が高く年相応、などとは無縁だった。仕方ねえなぁ、と溜め息を吐いて遼は帰った。彼らが復活するのは10分後である。
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