文句あんのか | ナノ
悪鬼羅刹を従えて


「坂本のおっちゃーん。学生証の落とし物だとよ。」

氷帝前。神出鬼没の遼は白昼堂々守衛に学生証を手渡した。

「おぅ。ご苦労さん。榊先生が来たら音楽室にだそうだ。」

「了解。入っていーの?ブラックリストだろ?」

「しがない守衛は言う事聞くしかないんだよ。」

んじゃ遠慮なく。と音楽室へ歩き出す遼。キャーキャーと騒がしい校舎を一瞬睨み付け、タイミング最悪などと思いながら音楽室のドアを開けた。

「久しぶり、サカッティー。」

「そうだな、佐々木。相変わらずで何よりだ。」

ふん、と遼は鼻を鳴らしピアノに座った。

「カバズィーの話か?」

「いいや。もう終わった事だろう。佐々木遼の情報を買いたい。」

ポリポリと頬を掻きながら遼は首を傾げた。

「宍戸亮か?ヤツなら毎日鳳長太郎と玉遊びに明け暮れてるぜ。一回見たけどスキルは上がってる。もしかしたら復帰すんじゃねぇの?」

「そうか。私の情報は無いからな。これでどうだ。」

「オイオイサカッティー。俺未成年の上に義務教育中のガキなんだけど。」

差し出された封筒に苦笑するものの受け取る。

「お前は誰かを守る気など無いだろう?あればSPにしたいくらいだ。」

「ガキに守られちゃ世話無いだろ。けごたんは血眼になって俺探してるけどなぁ…まだ俺の事男だと思ってんのか?」

「許可証だ。聞いてみたらいいだろう。」

また差し出された許可証を受け取り、遼は笑った。

「こらまた用意周到でいらっしゃる。滝萩之介に要注意だな。あいつが一番レギュラーじゃ弱い。」

「凄まじい観察眼だな。だからこそやれるわけだ。」

「そ。頭のいい人は話が早くて助かるぜ。んじゃまたな。気が向いたら見に行く。」

歩き出した遼を榊は眺めていた。その手には汗がじっとりと滲む。敵意など、誰が見せられるだろう。

「ご機嫌麗しゅうけごたん。ちょいと聞きたい事があんだけど。」

屋上にやって来た遼を見てレギュラー達は固まった。

「佐々木遼…どの面下げてご機嫌麗しゅうだ。」

「俺はやり合うつもりはねぇよ。んでけごたん、何で俺の周り嗅ぎ回って俺探してんだ?カバズィーならサカッティーが終わったっつってたぜ。」

「それじゃねぇ。お前氷帝でテニスやらねえか?」

「けごたん…俺にスカート穿いて喜ぶ趣味ねぇ。」

忍足と向日以外の表情が固まった。

「遼、女やで。下に付いてへんもん。」

「まな板胸だしな。んでこの図体と見た目。劇的な声変わりとかねぇから。」

「佐々木、どうやって入ったんだ?」

向日が素朴な疑問をぶつけるがあっさりと

「サカッティーに呼ばれた。そんだけ。」

「おん、な…」

呟いた跡部に首を傾げ、遼は笑った。

「何なら見ても触ってもいいぜ?安心しろ、手出ししなきゃ反撃しねえ。」

にやぁと笑った遼に全員が戦慄した。

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