文句あんのか | ナノ
あくまで応急処置


「ちーっす、おっしー。」

「遼、脚に刺されっぱのナイフで徘徊せんでくれへん?女の子や知っとってんおっかないわ。」

「抜いたら出血増えんだろ?つーか徹マンでねみぃから泊めろ。」

「そら構わんけどな…自分デカすぎやねん。岳人が怯えとるやん。」

「そればっかは俺にはどーしょーもねぇよ。はじめましてと言うべき?向日岳人君。佐々木遼だ。よろしくしなくていいからな。」

「侑士…自販機投げる奴と知り合いなのかよ…」

「まーなぁ。俺は助けてもろたから。遼はこれでも助けを求められたら助ける事もあんねんで。」

「知り合った昔話はどーでもいいから手当しろ。これ以上止血しきれねぇ。」

「おぅ、上がってくれ」

ナイフを抜き、無造作に投げ捨てた血の滲んだズボンの下には白い肌。下着は当然女物だ。

「動脈は逸れとんな。悪運のいいやっちゃ。」

「逸らしたに決まってんだろ。俺の反射神経舐めんなよ。」

「おま、女…?」

それに首を傾げる遼。

「がっくん、おっしーが言ってただろ。俺は歴とした女だ。見てもつまんねえ貧相な胸でも見て確認すっか?」

「遼、からかうのも大概にしとき。ガチで岳人瀕死にされたら俺も困んのや。」

「いつぞやのカバズィーは肋骨ヒビ入れたけどな。」

「はぁ!?」

目を丸くした向日。その間にも忍足は手際良く処置をしている。

「アレはおっかなかったなぁ…樺地やからヒビで済んだんやで?」

「けごたんがふっかけたんだぜ?まぁんなこたどーでもいいから今回は誰の情報が欲しいんだ?」

「んー、彼女やな。」

「取り立てて問題はねぇなぁ。こないだ、けごたんとデートしてたらしいぜ。おっしー利用されまくり。」

クックックッと笑う遼。しかし忍足は眉根を寄せた。

「ホンマ浮気もんやなぁ。別れよ。」

「あとベッキンガムで一晩過ごしたっつー話だ。けごたん手が速いな〜。」

「跡部も俺も来るもの拒まずやし。遼のお陰で別れる口実作りには困らんわ。とりあえず止血は完了や。よぉ麻酔無しでこないな怪我耐えられんなぁ。」

「メチャクチャいてぇに決まってんだろ。替えのズボンまだあったか?」

「あるで。遼はソファで寝るんやろ。」

「別におっしーと一緒に寝ても構やしないけどイヤなんだろ?」

口元だけで笑いながら、忍足の家に置いているパジャマに着替え出す遼。

「イヤや。岳人と寝たがマシや。」

「つーかがっくん固まっちまったぜ?相棒助けてやれよ。」

「そら180センチ以上ある女なんて珍しいわ。また伸びたんやない?」

「かもな。んじゃお休み。飯出来たら起こしてくれよ。」

「お休み。」

完全にはみ出ているのにそのまま眠る遼。寝ていても敵意には反応する獣のような女。気紛れに来ては情報を対価に要求する最強の女は、眠っていれば美しい。

「寝とれば極上の美人やのになぁ…。」

そして忍足は向日を復活させにかかった。

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