文句あんのか | ナノ
会うと言えない


「おっひさーみっちゃん。元気にテニスしてるかーい?」

口だけで笑いながら手を上げる遼だが、咎められる人間は居ない。

「佐々木…3日か。」

「おぅ。リョマたんその他諸々一年の面拝みに来たぜ。」

「越前?興味でもあるのか。」

「まーな。一応情報屋紛いやってっから生きた情報はとったし。面拝むだけだから。スミレちゃんの孫もチェックしなきゃな。」

「竜崎先生の孫?」

「おぅ。方向&運動オンチでマンガみてぇなドジっこらしいぜ。」

「下らない事ばかり覚えているな。」

「心外だな、みっちゃんイヤミも通用しねえし。教科書の情報なんざ仕入れても利用価値無いだろ。」

ピクッと手塚は反応した。イヤミも通用しない、とは知っているのか、と。

「…昼休みに少し話がしたい。」

「場所は?」

「屋上だ。鍵を渡そう。」

「乗った。」

昼休み

「どこまで知っている。」

屋上の鍵を閉めて手塚は遼を見た。遼は空を仰ぎ

「みっちゃんが一年の時に先輩から左肘やられて今はフルパワーでプレイ出来ない、と。ヘタしたら選手生命も脅かすらしいな。」

「…情報屋紛いとは、流したのか?」

それに遼は笑い、睨んだ。

「オイオイみっちゃん、見くびってくれるなよ。対価が無きゃ俺は言わねえ主義だ。情報は生き物だからなぁ、怪我の情報なんざ売れないぜ。怪我しても平気で動き回るヤツだっているんだぜ?」

蛇に睨まれたカエルのように動けない手塚。

「…そう、か。」

「ご理解頂きまことに恐縮に御座います。対価があるなら教えてやるぜ。」

座り込んで手製の弁当を広げ、箸を持つ遼はもう睨んではいなかった。

「その内、聞くだろう。これは話していいのか。」

「ご自由に。関東なら網羅してるはずだから知らなかったら調べるぜ。」

ぱくんと弁当を食べ始める遼の底は知れない。入学当初から背が高く、目つきの悪さから喧嘩を売られては返り討ちにしてきた遼。見物人を片腕で投げたり、自販機を投げたりと問題児として扱われていたが情報を武器に居座っているのだ。退学にしたらたれ込むぞ、と。

「あぁ。」

話し下手な手塚はそれ以上言えなかった。

「ま、みっちゃんが欲しがるのはテニス部関係だからな。それにみっちゃんそーゆーの嫌いだし。正面から叩き潰したいサナゲンみたいな堅物だ。」

唐揚げを箸に持ちながら遼は違うか?と言わんばかりに見上げた。

「確かに、な。」

「俺の情報捨てたもんじゃねぇのにな。気が向いたら何か持って来いよ。買ってやるから。」

楽しげに笑いながら、遼は弁当を食べていた。

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