文句あんのか | ナノ
つい出来心で


星占い。大概の女性ならば一時は気にしただろう。遼は手塚家で朝ご飯を食べながら、何気なく観ていた。

「今日の最下位はごめんなさい、天秤座の男性です。何をやっても裏目にしか出ません。今までのツケを一気に払わされるかもしれませんので要注意。ラッキーカラーは赤、危ないと思ったら直ぐに逃げた方が賢明です。それでは良い1日を〜。」

「…みっちゃん、コレ俺が前使ってたキーホルダー。先に謝っとく。ゴメン。」

ポケットから出された赤い招き猫キーホルダー(千石から貰って使っていた)を渡され、手塚は眉間の皺をかなり深くした。

「…何をした。」

「実験。」

手塚ファンの女の子達に、実はみっちゃん、ワイルドなファッション好きなんだぜ。と吹き込んだのだ。実際、遼のお下がりでパンキッシュな皮ジャン(奇跡的にダメージ無し)などを所持している。着たけりゃ持ってけ、と言われた手塚は持ち出していた。

「何の実験だ。」

「噂ってどこまで広がるかなーってさ。情報源はともかく、女の子の噂は広がるの早いだろ?」

遼が謝った時点で、暴露しているのだがそこまで頭は回らない。

「…俺を使ったのか。」

「あはは、使ったなんて人聞きの悪い。意外性を求めただけさ!」

おっさきー、と私服で出掛けていく遼を半ば睨みながら、手塚も家を出た。

「おっはよー手塚!ねぇねぇ、ワイルドな服好きって噂あるけどパンク?ビジュアル系?それとも一昔前の不良みたいなの?」

校門で菊丸に遭遇した手塚は、コレか、と遼に対して延々と全科目の勉強をさせる計画を立てずにはいられなかった。

「…着た事は無い。」

ただし、人前では。遼のファッションセンスは悪くないどころか、似合っているので試着した事はある。眼鏡がある限り、手塚は自分には似合わないと判断しているが。

「えー手塚の私服あんま見てないから見たかったのにー。」

「朝練に遅れるぞ。」

先に謝っとく、ゴメン。と言った遼の言葉通り、噂は葉っぱも付いて学校中に広まっていた。実はヴィジュアル系バンドのファンで、影響を受けただの実際バンド活動をしているんじゃないかだの、手塚にとっては限りなく不名誉だ。そんな暇はない、と言ったところで広まった噂が収束する訳でもない。

「…凄まじい噂だな。」

「佐々木が元凶だ。」

「その佐々木曰く、手塚は何着かお下がりを持っている筈だと。」

遼が着られる服は、全てメンズだ。その事実に人の噂も七十五日、と諦め気味の手塚がいた。

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