文句あんのか | ナノ
丈夫さ限界突破
ハーブを育てる遼だが、とことん似合わない。家に帰ればベランダの植物に水やりをするのだが…目の当たりにした忍足は普通に固まった。
「遼…ガーデニングに目覚めたんか?」
「単に料理に使うだけだって。コレがローズマリーでアレがレモングラス。ブーケガルニに使うんだよ。煮込みにな。」
確かに遼が料理を作るのも似合わないのだが、ガーデニングはもっと似合わないと思わずにはいられないのだ。
「…名前は聞いた気がすんねんけど…似合わん。」
「一人暮らし長いしなぁ…花に囲まれた生活ってワケでもねぇし。」
「寧ろ血とガラの悪い兄ちゃんに囲まれた生活やな。遼、生傷多いやん。」
真冬でも屋内なら半袖で活動可能、忍足には考えられない。単に子供体温なだけなのだが。
「だな。メッタに骨だの内臓だのはやられねぇけど殴られんのはいつもだ。」
水やり終了、と自室へ戻る遼を忍足は追った。
「な、内臓て…」
「一回腸がやられたらしくてな。暫く消化に悪いもん食うなって言われた。」
言われただけで実行をしない辺り、医者泣かせだ。しかしケロッとしているのが恐ろしい。
「…遼は殺しても死にそうやあらへんな。」
「おっしー…俺一応人類のハズなんだけど。」
骨も折れる、血も流れる、それでも丈夫すぎだ。痛いと言いながら、手当ても凄まじく適当。
「出血しなきゃそんでええとか一般人に土下座モンやぞ?」
「いや、流石に俺でも医者にも止めらんねえ出血ってあっから。」
何を言わんとしているか、すぐさま忍足には解ったのだが、そういう問題ではない。
「それは人間やからやん。しゃーないわ。」
「あ、おっしー俺人間って認定してやんの。」
「…ギリギリ人間やな。」
人外と言うか、人の皮を被った怪獣。マジギレしたらどうなるのかも判らない。沸点が低いのか、高いのかも甚だ怪しい。
「中年のおっさんだって爺ちゃんだって植物好きはいるだろ?」
そう言われても、見た目を考えてくれと忍足は溜め息を禁じ得ない。
「まぁ…遼は料理目的で育てとるしな…。ニコニコしながら花見とったら天変地異起こるやん。」
「起きたらすげぇミラクルだな。やってみっか?」
「すまん頼むから止めて下さい。」
想像したくもない映像になるのは解りきっている。忍足は不用意な発言を、すぐさま撤回した。
「入学式の時のは赤い桜とか言われてっけどな。」
「…遼の制服姿は破壊力ありすぎやねん。」
そして育てられたハーブを使った料理を食べる忍足であった。
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