文句あんのか | ナノ
そんなお年頃
学校へ来たと思ったら、授業が終わるなりダッシュ(世界新の勢い)で自宅へ突っ走る遼。
「…何があった?」
「あれは単に大奥の再放送を観たいだけらしいぞ。女性に人気らしい。」
ドロドロしたドラマが大好きな遼。その為なら、何を犠牲にしても構わないと言い切るので怖い。色々な意味でとれる。
「…DVDを集めるとか言っていた筈だが。」
「人気がある上に主題歌のファンまでコレクションする程で、品薄なのだそうだ。」
流石の遼も、品薄の物を手に入れるには時間と手間をかける。万能ではないが…下校する生徒をなぎ倒して突っ走る姿は恐ろしい。
「火曜日は要注意だな。」
「そうだな。何人犠牲になったか調べるとしよう。佐々木に悪意は無くとも出ているからな。」
おそらく、帰り着いた頃には制服が血で汚れているだろう。喧嘩を売ろうものなら問答無用で叩きつけられる。歩く核弾頭が何か求めると、被害は甚大だ。
「大奥に間に合わないーっ!」
廊下を突っ走る大石、各女子生徒。ある意味、遼も流行に乗っている。
「社会現象のようなものだな。」
「…佐々木がドロドロしたドラマが好きだとはいいデータだ。」
もしかしたら何か釣れるかも知れない、と乾は眼鏡を輝かせた。予想通り、血塗れの制服でニコニコしながら大奥を見る遼だった。
「やっほぅみっちゃん、今日の晩飯京風統一だからなー。」
嬉々として調理をする遼に手塚は眩暈を覚えた。影響されすぎで、包丁片手に笑顔が恐ろしい。
「京風と言うことは薄味になるのね。楽しみだわ。手伝いならするからね。」
「あやちゃんありがと。んじゃご飯炊いといてくんね?」
馴染みきった遼。手塚も異様な姿に慣れている。Tシャツにジーンズで、淡い色のスリッパに黒のエプロンと言うミスマッチ。
「おやすいご用よ。」
和気藹々と台所で、今日の大奥について話し合う2人に、手塚はもう何も言うまいと自室に向かった。
「…本当に京風で統一したのか…。」
「たりめーだ。あんな美味そうな料理見せつけられて作らずにはいられねぇ!」
本気で影響受けすぎだ、と額を押さえる手塚。しかし他は楽しげだ。
「あ、遼さん山椒取ってくれないかな。」
「ほい。」
遼ご自慢、産地直送山椒はかなり使用頻度が手塚家では高い。わざわざ持ち込むのだ。大概の調味料は遼の持ち込んだ物。加えて洋服類も置いているから、半ば客間は遼の部屋だ。多数ある遼の潜伏場所、全て把握するのは難しい。
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