文句あんのか | ナノ
人の目を気にしよう


遼は一人暮らし同然であるからして、買い物に行くのは当たり前である。主婦の戦場、タイムセール。修羅さながらに目当ての商品を奪い合う…ような真似は絶対にしない。遼は金持ちの一人娘で、何に使えと言いたくなるだけの生活費+お小遣いのみならず、違法だが情報で多少収入がある。暗黙の了解だ。

「みっちゃん、今日おでんがいいとかぬかしてたけど仕込みって知ってっか。」

おでんには欠かせない、牛スジから出汁をとったり卵や大根を下茹でしたりしなければならない。味が染みた方が遼好みだから、2日かけておでんは作る。

「仕込むようなものなのか。」

「チッ、だから料理しねえ奴は面倒なんだよ。1日で作ったおでんなんざ俺は認めねぇ。」

凝ると料理は奥が深い。素材から拘るとキリがない上に金もかかる。ちなみに、何故この2人が近所のスーパーにいるような超常現象の原因は手塚家の陰謀である。目立つ事この上ない。そぐわないにも程があるし片や学ラン、片やラフな格好。どういう関係ですかあなた達と主婦や子供はおろか、店員まで釘付けになっている。似ていない兄弟ですと言うには雰囲気が違いすぎる。兄がグレて弟は超真面目ですと言い張れるかも怪しい。

「つーワケで、今日はカブ使うから。」

ひょいひょいと値段も見ずに痛んでいない野菜をカゴに放り込む遼。寝かすような作業が無ければ、遼の手際は速い。

「洋食は先日作っただろう。」

「純和風な食生活してるよな、みっちゃんち。」

「佐々木は統一性が無いと言う。」

「典型的な現代人の食生活だろ。」

その間も無駄の無い動きで肉類をチェックしている辺り、主婦状態である。手塚が何故同行しているのか、甚だ疑問だ。カゴは遼が持っている。選別も遼。強いて言えば財布だろうか。

「重くないのか。」

「みっちゃん、俺は佐々木遼様だぜ?人間投げんのに10キロ無いもんを重いとか思えるような人間に見えんなら眼鏡換えとけ。」

ごもっともなお話。サクサクと会計を済ませて、彩菜から渡されたエコバックにきっちり詰めていく手塚。遼はこういう点でアバウトすぎるからだ。買い物が終了し、エコバックを持ってスタスタ歩く2人。

「結局、メニューはどうするんだ。」

「カブと鰤の鰤大根風。味噌汁は鰹で小松菜と油揚げで、小鉢は葉っぱもんの白和え。んできんぴらってとこか。」

目撃した青学の生徒は皆目を疑った。仲良く?買い物をしている2人が慣れているように見えたのだ。実際慣れているのだが。

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