文句あんのか | ナノ
凶悪で不真面目な男子


力無く机に突っ伏す遼。いつもはどっかりと足を組み寄らば蹴る勢いが全く無かった。

「佐々木…何があった?」

「しゅうちゃんの家族に嫁に来いとまで言われたんだよ…何が悲しくて自分よりキレイな男の嫁にならにゃいかんのだ!断固として拒否る!断る!」

「佐々木、落ち着け。」

「ガッコで落ち着きのある俺を見た事があるのか!?みっちゃん!」

「…無いな。」

「俺が、この俺がドレスなんぞ着てみろ!タキシードの方がかなり似合う俺なんだぞ!?」

「和装も男物しか着なかったな。」

「そりゃ一年の時にサナゲンの爺ちゃんから貰った奴だ!あれから何センチ伸びたと思ってんだ!?180越えの悲しさをみっちゃんが解るとは思わねえけどまだ伸びたらまた洋服買い直しの旅だぞ!?」

「菊丸辺り羨ましがるだろうな。」

「どこぞの筋力鍛えすぎで身長伸びなかったヤツに分けてやりたいぐらいだ!男物でもなかなか見つかんねえとかイジメだろ!」

「とりあえず佐々木が男物しか着ない理由は判った。着ないのではなく着れないのだな。」

「当たり前だ!制服も注文し直したっつーの!ただでさえスカート丈短いんだぞこのガッコ!デザイン知ってたらワザと落ちた!俺らの入学と同時に女子制服変更とかアリか!?確率的に有り得ねえミラクルだろ!加えて10センチ以上も伸びるとか考えねぇ!」

「入学当初から大きかったからな。性別詐称する訳にもいかない。」

「いっそそっち方面が確実に楽だ!幾度となく制服交換させられた挙げ句一年の時は体操服だと男に間違われ!夜の蝶のお姉様方から言い寄られ!男の方が楽だろ明らかに!」

「ある意味男の敵だな。」

「お前だってキャーキャー言われてんだから多少解るだろ!?俺は同性に言い寄られんだぞ!?」

「好きでやっている訳では無いと言いたいのは解る。利用したらどうだ?」

「俺はレズじゃねぇ!俺の知名度知ってんだろ!?とうとうそっちに走ったとか噂が流れんのは目に見えてんだろーが!」

「…意外と冷静に判断するな。」

「お前は俺を何だと思ってんだ!善良で真面目な女子中学生Aに見えたら眼科行け!」

「見えないから安心しろ。」

「お前の心配してねぇよ!畜生どさくさに紛れて実は男でしたオチに出来た方が楽だ!」

「無理だろう。男にしては華奢だ。」

「菊猫とかしゅうちゃんの方が細い!」

「充分細いだろう。正月に男物の着物を母さんに着せられていたが。」

「みっちゃん基準だろ!」


教室でギャーギャー騒ぐ遼だが、手塚の発言により学校内で遼が手塚と親公認で付き合っているだのと噂が流れた。


遼と呼ぶのは容易い。だがこの関係が壊れそうな気がしなくもない。元気すぎる程元気で妙な所で義理堅い佐々木。自分なりのルールを決めている。些か道を誤っている感は否めないが。…正月の写真を日記の栞にしている事がバレたらコンクリートに叩き付けられるだろうな。

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