文句あんのか | ナノ
閉幕


愛美に惹かれていた者達は、舞台が真実であると解って茫然自失と言った状態だった。跡部に指示され、手慣れたようにアイスティーを全員分作るメイド。

「本当に佐々木さん、役者目指したら?スッゴく板についてたし格好良かったよ。」

「無理。暑すぎてめちゃめちゃ疲れるぞ、コレ。」

不二の笑顔にも、遼は椅子に寄りかかって首を振る。役者の体力は並みではない。
敢えて乗った遼だが、底無しの体力ではないのだ。

「そう言えば猿山の大将、コレビデオあるか?もっかい遼センパイの演技見たい。」

「あーん?確か滝が撮るとか言ってたな?」

「頭からバッチリ撮れたよ。DVDにして希望者にDVD代だけ貰って焼くよ。」

「滝さん俺も俺も!」

「焼くなよ!一生残る恥じゃねぇか!」

挙手した桃城の足を軽く引いて、遼は拒否を主張する。しかし、滝は艶やかな笑みを遼へ向けた。

「無駄だよ、佐々木さん。もうデータ出来たから。」

「ハギー…テメェ夜道は気を付けろよ。」

唸るような声に、滝も肝が冷えるが遼は今疲れている。
メイドがお茶請けに出したオレンジピールを遼に渡した。疲れた時に、レモンの砂糖漬けなどは効果的だ。
遼も一掴みして咀嚼し始める。

「しかし教授、これから朝比奈はどうなるんだ?」

「青学退学は免れないな。私立中学に戸籍の無い少女が編入しただけでも、相当なスキャンダルだ。佐々木は見越して、かなりの手札を晒したらしい。」

「遼ってそーゆーとこ責任持って意地でもバラさないよな。オレンジの俺もくれよぃ。」

各々好き勝手に喋り、飲み食いを始める。手塚や仁王はストレートティーのグラスを持ったまま、うなだれていた。
舞台と言う名の公開処刑に等しい真似をされ、そのまま姿を消した愛美。彼女の素性が知れない所から、僅か一週間程度で暴かれている。

「ねぇ遼、どうして朝比奈さん?に興味を?」

「同じクラスで、曖昧に答えたから調べたくなったんだよ。そしたら全然だからさ。」

「中途半端に佐々木さんの興味引いて、痛い目に遭ったね。珈琲屋さんの事とか。」

遼は不二に合図をすると、芥川が寝ているソファへ移動し始めた。とりあえず、眠くて堪らない。
芥川を抱き枕代わりに、遼が寝入る姿を全員が眺めていた。

「お疲れさん、遼。二時間したら起こすで。」

「うん…シクヨロ。」

跡部も指揮を頼み、仮眠を取る。練習そっちのけで、事情を知るメンバーがダメージの無い者にあらましを話し、忘我状態の者達を復活させ始めた。


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