文句あんのか | ナノ
競演


必死に笑いを堪える者、あまりにも芝居じみたセリフの言い合いに眉を顰める者、興味津々に舞台を見る者、愛美に手が出せない状況を悔しがる者と、観客の反応は様々だった。
跡部と遼は、のりに乗って演技を続けている。

「そして我等が関東最強は1つの真実を突き止めた!!」

「何故、何故朝比奈愛美は都内の中学から転入したのに!何故幸村精市が入院している事を知っている!?」

「そして俺様も請われ、佐々木に協力した!!」

「何故だ、何故親の存在が見つからない!!」

「何故だ、何故関東最強の名を知らない!?」

「「何故戸籍が無いのだ、朝比奈愛美よ!!」」

愛美の両脇に2人が跪き、答えを乞うように呼びかけた。
跡部の目は鋭い青さを維持し、遼の目は鉄のように輝いていた。
愛美が答えられないまま、2人は立ち上がって舞台も続く。

「そして哀れな朝比奈愛美に、恋心を抱いた菊丸と海堂!」

「氷帝からは鳳と向日!」

「「そして立海からは仁王と切原だ!」」

愛美が言葉を挟もうとも、身を捩り跡部はセリフを続ける。行動とセリフが合っていて、絶妙なタイミングだ。

「揺れ動く恋心に悩める手塚と真田!」

「しかし彼女は逆ハーレムを作ろうと企んでいた!!」

「誰も彼もが叶わぬ恋に、何故落とそうとした!?」

「何故関東最強の父のマンションに住まうのだ!?」

遼が指を差し、追及するような声音で問いかけ、跡部は苦しげな演技を続ける。
観客は、演技に呑まれながらも事実に驚いていた。

「あぁ、されど彼女は戸籍無き娘故に明日をも知れぬ身!!」

「親も居ない孤独な娘!!」

「「あぁ神よ!!この哀れな朝比奈愛美に家族を与えたもう!」」

2人で手を組み、天を仰ぐ。アドリブとは思えない熱演だ。

「しかし哀れな娘は我等が関東最強を侮辱した!」

「そして関東最強は娘に怒りの雷を落とさんと決意した!」

「「それがこの舞台だ!!」」

跡部の合図で、一気に会場が明るくなった。愛美は顔色を無くし、震えている。
遼と跡部は深々と一礼し、右手を挙げた。

「この舞台が偽りなき真実だと、俺は観客に誓う。俺の調べた全てを、ここに。」

「俺様もまた真実であると、全校生徒及び協力者達に誓う。」

「「これが俺達の調べた、真実だ!!」」

愛美は泣き崩れ、座り込んだが観客からは溢れんばかりの拍手。しかし、愛美に想いを寄せていた者達は愛美を凝視していた。

「本日は関東最強の公演にご来場頂き、ありがとうございます。またいつか、2人が舞台に上がる事をご期待下さい。佐々木、最高だったぞ!!」

日吉の興奮は、冷めないようだ。

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