文句あんのか | ナノ
壮大なるコメディ
少し電車に乗り、たどり着いた氷帝学園。遼は笑顔で守衛に挨拶すると、簡単に門を潜った。守衛は遼に向けて最敬礼だ。
「…佐々木さん、氷帝の守衛さんと顔見知りなの?」
「ん?うん。俺氷帝の音楽教師と仲良しだからな。」
ニヤリと笑い、跡部の指定した体育館へ向かう。広大な氷帝の中身までは、愛美も解らない。
しかし目聡く、立海の制服を見つけた。菊丸の制服を引っ張り、愛美は見慣れない制服の事を知らせる。
「え、立海!?何で?」
「ユキちゃんが1日だけ退院してな、氷帝の練習を見てイメトレに組み込むんだと。いい日選んだだろ俺。」
「ユキちゃん…?」
「立海テニス部部長。俺がけごたんに交渉したから出来る裏技だぜ?」
「…佐々木さん、何でまたそんなお節介を…。」
「いいじゃねーか、減るもんじゃなし。」
ぞろぞろと体育館に向かう立海を追いかける形で、遼率いる青学メンバーは入った途端照明を落とされた。
遼は、一杯食わされたと悔しそうな顔だ。
「さぁ!!今日のゲストは他ならぬ我等が最高の君主、関東最強だ!」
マイクから伝わる跡部の声に、凄まじい数の氷帝生達がコールを始める。
[佐々木!!佐々木!!佐々木!!]
「あんのやろ…。あぁ!俺こそは関東最強、佐々木遼様だ!!」
こうなりゃヤケだ、と芝居に思い切り乗る。ビリビリと鼓膜を震わせる遼の声に、コールは止まる。跡部の合図でスポットライトが遼に浴びせられた。
「さぁさ紳士淑女の皆様どうぞご覧あれ、関東最強がどう足掻いても情報を引き出せなかった女、朝比奈愛美だ!」
「えっ、えっ、え!?」
「そして本日の見せ物は、俺と跡部と乾が総力を挙げて集めた物語を語ってやろう!!」
「よぉ遼、待ちくたびれたぜ。壇上に上がれ!!立海と青学の奴らは指をくわえて見ていろ!」
歓声が上がり、遼と跡部による舞台は幕開けとなった。愛美は、未だに混乱している。
「自由を愛し、何人たりとも支配を許さぬ関東最強!!」
「ただそこに!知らぬ事は無いとも言われたこの俺に!!」
「「解けない謎が1つあった!」」
「偶然転入してきた朝比奈愛美を知らなかった!」
「あらゆる伝手を辿っても尚解らぬ素性!!俺は同じく疑問を持った乾と共に調査を始めた!」
朗々たる声で掛け合いをする2人に、幸村は腹を抱えて笑いをかみ殺していた。
「アレ、アドリブだよね?」
「…跡部の趣味の確率、99%。やりすぎだな。」
愛美にスポットライトを当てられているので、王子様達は手出しが出来なかった。
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