文句あんのか | ナノ
必然に作られた偶然


華やかな反面、裏は策謀の蠢く青学近辺で、愛美は苛立ちを隠せなかった。
不安もあるが、よりによって愛美の住む近所に王子様達の名前が無かった事と、帰宅部のままである愛美が王子様に送り迎えされる可能性は限りなく低い事実だ。

「何で、何で、何でっ!転入したばっかりなのにっ!」

「運が悪かったね、まぁ…佐々木さんがもうすぐ退治してくれるとは思うよ。」

「何で佐々木さんの名前が出るのっ!?女の子じゃない!」

共に食事をしていたクラスメートのフォローにも、愛美は食ってかかる。遼の名前は抑止力であり、恐怖の象徴でもあるのだ。

「佐々木さんは、強いから。不審者なんて一撃で吹っ飛んじゃうよ?」

「そんなの、見なきゃ解らないわよ!」

「…去年までは、学校で大暴れして手塚君がよく呼ばれて止めに行ってたんだけどね。やっぱり百聞は一見に如かずかぁ…。」

小学生にすら名前を知られる、遼の仕業だと誰が、見抜けるだろうか。いきなり不審者を仕立てた訳では無く、ただ学校側が対策をする必要があったのだと思える。
愛美にしてみれば引き立て役を連れて、遠出をするには女子生徒への心配が周囲に色濃く存在していた。
遼の計略は雑ではあるが、知らないままフォローをする保護者達が愛美の邪魔をしている。

「佐々木さんの武勇伝はもうたくさん、どんなに頑張っても中学生じゃない。」

「それを乗り越えたから、関東最強ってあだ名があるんだよ?大人だって怖がるんだもの。」

愛美は整えた唇を噛みしめた。2人で手塚の前に立てば、遼の存在感が強すぎて自分は無視される。どんなにイケメンでも遼は女だから、逆ハー補正は効かない。
土日に氷帝と立海に出会い、順調に見えた計画を容易く砕かれた。他校の生徒が、青学に布かれた集団登下校の話を知るまで愛美は殆ど動けないのだ。

「…いつまで、続くのよ…。」

「今週以内に、片付いたら佐々木さんが頑張ってくれたと思っていいね。」

「うん、佐々木さんも集団登下校だけど私服は男の人みたいだから歩くだろうし。」

愛美には、どう足掻いても出来ない事だ。容姿が、あまりにも違いすぎる。
更に最近は、悠々自適の一人暮らしのハズが同じマンションの住人に世話を焼かれはじめ、近所の人々が女子中学生の愛美を詮索し始めたのだ。親はどんな教育で女の子を一人暮らしさせているのだ、と。
ほっといてと言いたいのだが、愛美は孤独を実感し始めた。

「こんな、事って…!」

憤る愛美を、クラスメート達は様々な感情を込めた視線で見た。手塚も、その一人だ。

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