文句あんのか | ナノ
カードゲーム


少なくとも、2日は間を置かなければ愛美を華々しく追放する事が出来ない。行動を妨害する為に、遼は数枚のカードを切った。
人は常に、醜聞からは逃れられない。どんなに清廉潔白な人柄であっても、煙を立たせる事は手練れにしてみれば容易。一人暮らしの女子中学生1人、追い詰める事は朝飯前だ。
そして、寛大な心と心からの親切を行う者との飴と鞭は愛美の行動範囲を狭める。更にとどめとばかりに、遼は最近出没し始めた不審者を使って、近辺に住む年頃の女性の独り歩きを、学校側から自粛させたのだった。

「ま、ザッとこんなモンだな。だいぶ雑な使い方だぞ?」

「…ホント、佐々木さんって裏技いっぱいあるなぁ…。」

苦笑しながら、珍しく食堂で会話を行う大石、不二、乾、遼。周囲は完璧に、遼の息が掛かった女子生徒の壁が作られ、それぞれ思い思いの昼食を楽しんでいる。

「しかし佐々木、それでは心身症にならないか?」

「多分大丈夫。たかだか2日、近所に住んでる生徒と登下校って事だから、学校側から近所の奴のリスト、今日みんな貰ったろ?」

つまり、近所に住んでいるが故に独り歩きを止められるが、一緒に動けばいいだけなのだ。制限を受けるのは、女子生徒だけ。

「あ、貰った。部活やってる女子は俺も送るし。」

「悪影響、ねーだろ?明日にゃ突き出してお仕舞いだ。」

「一晩でここまでするなんて、ビックリしたよ。」

大石の他意のない言葉に、不二が微笑んで遼は笑う。乾は遼の手札に、感嘆を隠せない。
たった2日の時間を作る為に、ここまで大掛かりな真似を仕立てるのだ。一体どれほどの代償を遼が支払ったのか、考えるだに寒気がする。

「解除して、けごたんからメール来たら開幕。2日で終わらなかったら、控えがいるからな。」

「控え?何だ、それは。」

「ご近所の奥様方のウ・ワ・サ。義務教育中の女の子が一人暮らしなんて、根も葉もないのが流れて当たり前だ。俺は勘違いされてっから平気だけどな。」

「あぁ、さっき言ってた事か。お節介担当者と分けるって。」

「うん、佐々木さんには勝てないや。すっごくあっさり言ってるけど怖いよ。」

悪戯っぽく言っているが、いくら何でもやりすぎだろうと遼を窘める事が出来る学生は、今居ないのだ。
話題になっているのは、不審者騒ぎで中学生にもなって集団登下校?と学校側への文句なのだから。遼とて、制服を着ていれば制限を受ける。私服を着れば、そう声高に注意する者は居ない。

「さ、けごたんに期待しとこうぜ?」

食堂は、相変わらず賑やかなままだった。

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