文句あんのか | ナノ
足元注意


遼に抱えられ、家路につく愛美。彼女が男で、王子様の1人であれば自分の最高の騎士になっただろうと悔しさ半分、ライバルにはなり得ないと喜び半分だったが。
関東最強は甘くない。何故、珈琲屋を出た途端に遼が襲われ、自分が自宅に送られているか。
遼が敢えて仕組んだ事なのだ。

「え、ここ?」

「うん、四階の一番奥。」

マンションに辿り着き、体を委ねていた愛美は頷いた。それがある意味の戦いだと知らずに。

「立てるか?」

「ちょっと…自信が無い。」

「女だからいいけどよ…ちょっとは気にしとけよ。」

カードを渡し、遼はカードをまじまじと見た。珍しいのだろうか?と愛美は眺めるだけだ。女である事を忘れれば、文句なしの美形なのだから。

「四階、だったな。」

「ありがとう。」

遼に送られ、波乱万丈な2日目を終えた愛美。
菊丸に構われ、手塚を少しばかり引き込めた喜びとイケメンにしか見えない遼に抱えられて帰宅、と素晴らしい1日だ。
遼と言うと、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「どこのどいつだか知らねえけどオヤジのマンションに住まわせるたぁ爆笑モンだな。サダに教えてやろーっと。」

そして、委託している不動産会社に訊ねたのだ。遼はオーナーの娘であり、現時点では準管理者と不動産会社から思われている。
意外な落とし穴に、誰が最後に笑うだろうか。

「サダサダ聞いてー。絶対お前驚く新事実発覚。」

「珍しいな、どうした?」

「朝比奈愛美ちゃんちのマンション、オヤジのマンションだったんだよ。」

「…は?」

「ほら驚いた。自宅からパソコンに送るからパソコンのアドレスくれ、大丈夫な奴。」

「メールする。…つくづく佐々木は敵にしたくないが味方にすると最高だな。」

電話をしながら、乾は自分の足を思い切り抓って驚きを押さえ込んでいた。
余りにも、盲点だった。遼は金持ちのお嬢様である事を、よく忘れられるのだ。

「だろ?あー一芝居打った甲斐があったぜ。みっちゃんには内緒な?説教されっから。」

「手塚にバレたら説教される確率98%。解っている。」

「じゃ、後でメールな。サダ、チャット出来るか?」

「あぁ。URLをくれ。」

「うん、じゃーな。」

その後、遼は不二に芝居協力の報酬として昼食を確約し、乾と不動産会社から送られたデータの検証作業を開始した。
遼の手駒は、両手両足では足りない。万が一乾が裏切っても、他にアテがあるのだから。更に恋患いになろうと、遼の怖さは変わらない。
名も無き人々を軽視するには、愛美は技量不足だったのだ。

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