文句あんのか | ナノ
得体の知れない


密やかに話す2人が気になるが、遼の噂を愛美は聞いていた。マスターの巧みな話術に、はめられていたのだ。
それを熟知する遼は、本題が終わっても楽しげに不二と会話を続ける。

「…あ。美味しい。」

「だろ?マキアートもテニスボール、やっぱたろじぃすげーよなぁ。」

「飲むのが勿体無いくらいだったよ。写真撮りたかったな。」

「また来たらいいじゃん、別に一見様おことわりじゃねぇし。」

「うん、佐々木さん本当にありがとう。…どのくらい、調べたのかな。」

不二の問いに、遼は一枚のプリントを見せた。心当たりを調べたが成果が無いのだ。思わず、不二も目を見開いて遼を凝視した。
機密情報に等しい、関東最強の情報網。

「…冗談、じゃない…。」

「都合がいいからな、ちょっくらお返ししてやるさ。」

「怪我、しないでね?ただでさえ目立つんだから。」

「サンキュ。ま、用が終わればいいだけなんだけど…最悪奥の手使うぞ。」

「聞いていい?」

「おう。警視庁と警察庁でちょっと頼む。」

不二は見事に固まった。
幾ら遼でも、それは危なくないか?そしてどうやるんだ?遼のやる事は、本当にとんでもない裏技ばかり。

「だから、奥の手なんだ。学校真面目に巻き込むしな。嗅ぎ付けられたら面倒だし。」

「…佐々木さん。それ違法じゃないかな…?」

「真っ黒な違法だぜ。グレーでも無いからかなり手札渡さなきゃ話になんねえし。」

遼のあくどい笑みに、不二はこめかみを押さえてしまった。
いい意味でも悪い意味でも、遼は男女差別をしない。則ち、ターゲットとなれば間違い無く追い込まれ、攻撃をした瞬間終わる。

「朝比奈さんが、止ん事無き立場だったりして?」

「しゅうちゃん。寧ろそっちのが調べやすいんだけど。」

「降参。かなわないなぁ…。」

軽く手を広げ、不二は苦笑した。ここまでして遼が調べられない中学生は、極めて稀だ。
近しい者なら知っている事を、調べるだけだと言うのに。

「そろそろ出るか。」

「あ、うん。今日は僕の奢り。佐々木さんから色々聞いちゃったしお礼にね。」

「頼むからあんまりバラしてくれるなよ?」

「出来るわけ無いよ、佐々木さんに吹っ飛ばされたくない。」

のんびりと会計に向かう2人。愛美も我に返り、慌てて会計すると店から出た。

「しゅうちゃんすっこんでろよ。今日の俺は機嫌が悪いんだ。」

「逃げるよ。」

品の悪い複数名の男達に、服を切られながら殴り飛ばす遼。入り口で、愛美は固まったがマスターに引きずり込まれた。

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