文句あんのか | ナノ
推理小説のように
コンピューター室にて、遼は唸りながら携帯をいじっていた。出て来ないのだ、朝比奈愛美の名前も写真も前歴さえもが。
「…チッ、サダ、どうだ?」
「驚くほど掠りもしない。佐々木のデータベースを借りたのに、済まないな。」
「制服のカリ返しただけだ。…都内虱潰しで出て来ねぇって、異常すぎじゃね?」
パソコンの椅子に行儀悪く座り、机を蹴り飛ばしたくなる程苛立っている。
膨大なデータベースは、違法行為で引っ張りだしたとんでもないものだ。在学していたのなら名前が残る。
修学旅行や予防接種で確実に。
「…佐々木、未成年で義務教育課程の者が一人暮らしをするにはどんな条件がいる?」
「保護者の同意、一番近所に住んでる親戚類の連絡先は必須。ついでに児童相談所が育児ほーき黙ってねぇから、俺の時はかなり親父が裏でな。爺さんいたからマシだったんだろ。」
「それも、見当たらないか。」
「まず相談所の注意リスト洗った。親どころか親戚から朝比奈姓洗うのか?私学だぜココ、おかしすぎんだよ。あ、お茶サンキュ。」
「ここでは飲むなよ。」
苛立ちも露わに、違和感を次から次へと言い出す遼。滅多に見られない顔だが、怖いので乾は愛飲しているお茶のペットボトルを渡した。
遼の言う点は、間違っていないのだ。私立の大学までエスカレーター式の青学、当然倫理観は厳しい。
遼は力ずくで黙らせているから、騒ぎにならないのだ。
「うん、ついでにさ、サダが知ってるナァ子の噂聞かせて?」
「大した話は無いが…あぁ、菊丸が佐々木のクラスに放り込まれた哀れな転入生に話しかけていたらしいぞ。」
「ま、注目はされるな。ココの編入試験、俺半分しか解けねえもん。」
「見せて貰えるか?」
「プリントすっから待って。」
サラリととんでもない事を言い合う2人だが、気分は謎解きだ。探偵ごっこでありただの遊び。
愛美をナァ子と呼ぶ、成績平均の問題児。しかし、乾もざっとテストを見て眉を顰めた。
「数学は、70取れれば御の字だぞ。」
「サダでも?全教科満点近くとか学校間違ってねぇ?」
「ますますおかしい。…佐々木、勝負ではなく探偵ペアとしてこの謎に挑まないか?」
「え、俺ワトソン?ホームズ?」
「調べて、話して、推理しあう仲間だ。俺は助手になりたくないし佐々木も似合わない。」
遼と乾は笑顔で、物理的にも腕を組んだ。出会わなければ、逆ハーレム補正は効果がない。
そして、遼が頼めば2つ返事で行動する人間は関東中に存在する。
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