文句あんのか | ナノ
後は頑張れ豊臣軍
乾杯、は無いが順に杯を交わし始めた。半兵衛と大谷は早々に中座したが、いつもの事だと遼も聞かされている。
「お、うまっ。いい酒だなコレ。」
「遼、飲み比べせんか?ワシはこれでもかなり強いぞ!」
バタリ、と酔っ払って倒れ眠った三成を後目に、家康と遼による飲み比べが始まった。
あれよあれよと、酒瓶が並んでいく。かなりの早さで家康は飛ばしている。
「遼、ワシは負けんろ!」
「呂律回ってねぇぞ家康。官兵衛平気か?」
「小生はおまえ等に酌ばかりでロクに呑めん!」
しかし顔色が変わらない遼に、完全に出来上がった家康では軍配は明らかだ。
家康もまた、酔っ払って寝てしまった。
「あれ?秀吉様は?」
「酔って寝所に向かったみたいだな。遼、次は小生と飲み比べだ。」
なんでだよ、と言わないのが酔っ払いの勢いである。互いに酌をしながら、次から次へと飲み干した。
遼は暑い、と上掛けを脱ぐとんでもない事態だ。
「…小生の負けだ…。眠い。」
「あ。みんな潰れちまったか。じゃあ俺も寝るか…ん?」
官兵衛が寝てしまったので立ち上がり、痺れた足を解していた遼は裾を三成に掴まれていた。
三成の握力は凄まじい。指だけ剥がせばいいものを、わざわざ遼は抱き上げて女中に三成の寝所を訊ねた。
「結構軽いな…。」
所謂お姫様だっこで、三成を寝所に転がすと大谷に伝え、飲み潰れた面々に片っ端から布団を掛ける。
「じゃ、俺も寝るから後頼むな。」
「はい、遼様。」
緋牡丹の着物を肩に掛け直され、欠伸をしながら寝所にむかう遼を女中だけが見送った。
髪の毛も着物も、はっきり言って台無しだったが、三成を抱える遼は酷く勇ましいと女中はこっそり見惚れたのだ。同じ女子とは思えない、ましてや年下になど見れない。
「…頭が痛むな…飲み過ぎたか。ん?」
翌朝、二日酔いに苛まれていた家康と官兵衛。布団はともかく、あれだけ呑んだのに遼の姿が無い。ついでに三成も。
中座した記憶は無いな、と頭痛に耐えながら話していると。絶叫が城に轟いた。
「遼ーー!!貴様を切り刻んでやる!」
「何でだよ朝っぱらから!何した!?」
まさか?と顔を見合わせた2人だが、遼がした事を事細かく三成が大きな声で言ったので頭痛が増した。
事情は解ったから静かにしてくれ、と言うには元気が無い。
「刑部に聞いたぞ貴様ぁぁぁ!!」
「つまり覚えてねぇのかよ!」
三成がそういう人間だ、とは遼もまだ知らないのであった。
朝から大谷の笑い声と三成の叫びと、半兵衛の一喝で大阪城は賑やかだ。…二日酔いには迷惑でしかない。
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