文句あんのか | ナノ
初仕事です豊臣軍


半兵衛により、豊臣に仇なす寄せ集め軍の殲滅を命じられた遼と三成。
策は事前に聞かされ、完全に遼の試運転である。三成は補佐とお目付役だ。

「…三成ィ、いい加減機嫌直して?兵士かわいそすぎんだけど。」

「黙れ男女。」

あまりに不機嫌丸出しの三成に、自然と避ける雰囲気が出来上がっていた。慣れない兵士は顕著な反応。

「行け。」

「はいはい。殲滅だっけ全滅だっけ?」

「皆殺しにしろ。秀吉様に逆らった時点で、負けは決まっている。」

突撃型の遼と三成は、性格はともかく布陣に於いては相性がいい。
遼が吼えながら敵を巨木でなぎ倒す中、三成は目にも留まらぬ技で確実に葬る。

「…秀吉様と、殴り合った女…。」

その事実に偽りなし、と遼に対して懐疑的な兵士達は息を呑んだ。夕焼けに輝く目は、まさに血に酔う悪鬼の如し。

「三成、終わった?あいつら追っかけてやるか?」

「逃げる腑抜けは捨て置けとの命だ。落ち着いて任は果たせ。」

「叫びながら斬ってた三成に言われたかねぇな。」

冷ややかに見る三成に、遼は攻撃的な目を向ける。どちらにせよ、兵士には酷な話だ。
殆ど遼が吹き飛ばして、それらを追いかけて討ち取りに走り回った。更に三成の邪魔にならないよう務める荒技。
そして現在、三成は冷静だが遼の頭に血が上っていて気が気でなくなっている。

「貴様は耳障りだ。戻るぞ半兵衛様をお待たせする訳にはいかない。」

「だな。俺の馬どこ?」

慌ただしく、帰路に就いた豊臣軍だが。
その仕事と移動の速さは随一のペアと言える。最速を謳われる三成に平然とついて行く遼率いる軍。
当然ながら、訓練の激しさも比例する。

「半兵衛様。石田三成と遼只今帰参致しました。」

「速かったね。秀吉が呼んでいるよ。」

「はっ。」

思い切り顔を歪めた遼に、鞘を当てながら三成は粛々と秀吉の下へ向かう。相変わらず慣れない正装に、汗を流す暇すら無かったのだから仕方ない。
色んな匂いが混じり、本人が自覚する程の悪臭だ。戦人の常とは言っても、矢張り嫌なものは嫌である。

「此度の任、我も聞き及んでおる。三成、遼、大儀であった。」

「秀吉様、有り難き幸せで御座います。」

秀吉の見えないところで小学生レベルの嫌がらせをしながら、平伏して話を聞く2人。
遼は、三成の足を力一杯足の指で抓っていた。遼の仕事ぶりを淡々と報告する三成に、遼を褒める秀吉。
部屋を出た途端、騒がしく罵詈雑言の応酬が始まっていた。
何だかんだ、仲がいいじゃないかと家康に言われ。全力で否定する2人は似ているのかも知れない。

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