文句あんのか | ナノ
思春期の男女です


「人除けには丁度良いんだろうけどよ、何で俺がイケメンだらけと言われるテニス部の昼飯に付き合わなきゃなんねぇんだ。」

不二に頼まれて冷たく見返す遼。話し掛けるだけでも怖くて罰ゲームになる。

「えっと…ダメかな?」

「天才さんよぉ、理由もナシに俺がはい分かりましたとでも言うと思ったか?つーか俺の登校率の低さ知ってるだろ?サダが知ってる筈だからな。ギリギリなんだぜ?」

大概の女子ならイエスと答えるお願いに取り付く島もない。

「それは…うん、知ってるけどこんな事頼めるのって佐々木さんぐらいだし。」

「あのなぁ、部長様のみっちゃんもビビる俺と飯食って何が楽しいのか聞きてぇんだけど。」

「えっと…」

「人払いさせたきゃカオリンとタケピードンパチさせりゃ一発だろ。タマゴの胃痛悪化すんぞ?」

いちいちごもっともな説明に不二は苦笑した。一筋縄どころか二、三本必要なんじゃないかと。

「佐々木さんって…男前だね。」

「ヘタな女より美人な天才さんに褒められてもなぁ。普通の女子なら凹むぞ?」

「ううん、性格がカッコいいと僕は思うよ。」

自分を偽らず生きる姿は不二に眩しい。真っ直ぐ前を向いているような気がしている。

「性格なぁ…単に仮面が嫌いなだけだぜ。」

「それを実行出来るからカッコいいんだよ。」

「色んなとこのブラックリストに上位で入る俺が?」

「うん。生き方が綺麗だよ。」

「しゅうちゃん、俺お前とタメ。生き方どうとか語れる年か?」

不二の輝かんばかりの笑顔すら遼には通用しない。笑顔だけ綺麗な人間を見てきたからだ。

「少なくとも僕はそう思うよ?」

「口説くなら別口当たってくれよ。」

「イヤだな、本心なのに。佐々木さんってめったに話出来ないから。」

「そりゃ学校行かねえからだろ。後はしゅうちゃんファンクラブのお嬢さん方が騒ぐから。」

「顔だけ見られて楽しいとは思えないよ。」

首を振る不二に遼は笑みを浮かべて頷いた。

「同感だな。面の皮一枚でギャーギャー騒がれんのはうぜぇ。好きでこんな面してねぇってな。」

「僕よりカッコいい顔だもんね。」

「しゅうちゃんそれ褒めてねえから。野郎に顔がカッコいいとか言われて喜ぶ女はいねぇよ。」

「でも本当だよ?背も高くて強くて、頭もいいし。」

「俺の成績中の中なんだけど。顔も成績も良くて運動も出来るしゅうちゃんに言われるってかなり複雑。」

「運動は明らかに佐々木さんが上だよ。それにやる気無いだけでしょ、勉強。ギリギリ出席してるだけだって聞いたよ。」

「殴り合いなら勝つぜ?ま、勉強は嫌いじゃねぇけど生きた情報程利用価値ねぇもん。さて、タイムリミットだ。勇気がありゃまた来い。」

チャイムと共に不二は笑顔で立ち去った。


話せば話すほど、楽しくて時間を忘れてしまう。誰の目も気にしないで話せる。佐々木遼…もっと知りたいな。教えて欲しい。どうしたらそんなに真っ直ぐ立って歩けるのか。

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