文句あんのか | ナノ
毎日がバイオレンス


頭殴られてガンガンする。今日は寝とくか、と家のドアを開けて遼は動きを止めた。

「朝帰りか。いいご身分だな。」

「そー言われると勘違いされそうだけど単に売られた喧嘩買ってたらこーなっただけだって。おはよーみっちゃん。何か用?」

「何かではない。何なんだこの惨状は!」

「怒鳴るなよ近所迷惑だろうが。頭いてぇしボリューム落とせ。雑誌とかペットボトルとかパンの袋以外の何に見えんだよ。」

「…酒まで飲んでいるのか。」

「おーい。単に殴られてガンガンすんだけ。酒臭くねぇだろ?」

グイッと手塚を引き寄せて確認させる。

「…血と汗の臭いが不愉快だ。風呂に入れ。」

「へいへい。んじゃ行ってきますよ。」

手塚の額に口付けを落とし遼は服を脱ぎ散らかしながら風呂へ向かった。

「脱ぎ散らかすな!」

「俺んちだしー。」

茶化しながら遼は風呂へ。手塚は溜め息を吐いて掃除を再開した。

「まったく…返り血だらけだな。」

服を見てはゴミ袋へ放り込んでいく。

「いってぇぇぇ!!シミる!」

「佐々木!?」

風呂のドアを思わず開けて手塚は心の底から後悔。遼が女だった事を綺麗さっぱり忘れていた。

「みっちゃん〜…打撲だけじゃなかった〜」

「…そうか。」

パタン。見てはいけないものを見てしまった気分の手塚。しかも焼き付いてしまっている。

「何を考えているんだ、俺は。アレはバケモノだ。」

とりあえず掃除だ、とゴミを捨てていくのだがこびり付いて離れない。なで肩に意外に華奢な胴回り。申し訳程度にしか無かった胸と傷痕だらけの白い肌。細く長い足。涙で潤んだ目。

「…はぁ…。」

「みっちゃーん、適当にパジャマになりそうな服取ってくんね?下着でうろついていいなら自分でやるけど。」

「うろつくな!」

彩菜から渡された遼の家の鍵。持っておくといいと言われたが手塚は手放したくて仕方がない。だが受け取るような知り合いが居ない悲しい現実。何枚か重ねられたジャージを見ては戻す作業。手頃なものをドアの隙間から突き出した。

「サンキューみっちゃん。」

もぞもぞと着る遼の衣擦れに眉間の皺を深めて手塚は掃除を続けた。床が終わったらクローゼットとタンスだ!と誓いつつ。

「ふぁあ。お休みー。」

ボスッとベッドに転がって目を閉じる遼。足を抱えて猫のように丸くなる。規格外の身長も面倒なのだ。

「…」

相手は遼とは言え、男として認識されていない感が否めない手塚だった。


気配には人一倍敏感なクセに無防備すぎる。…尤も、その気になれば何も考えず吹っ飛ばすのだろうが。一応気遣ってはいるようだ。叫んだのは佐々木の勝手で助けを呼んだ訳では無い。事故だ。偶然だ。佐々木が帰って来る事を考えなかった俺も悪いが部屋をこれ以上になく汚した佐々木も悪い。…勝手に掃除をしている俺は一体何なんだ。

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