文句あんのか | ナノ
赤い着流しの女


濃い赤の着物。特注で買った男物だけど、喧嘩対策になる予定が狂った。真選組に幽閉されちまってさ。

「おーす近藤く」

「ぎゃあぁぁぁ!!」

初めて着たけど。似合わねえのかコレ。デパ地下は腹抱えて笑ってるし。何なんだこの反応は。トラウマでもあんのか。デパ地下以外動揺しまくってんぞ。朝っぱらからうるせーな。

「遼、グッジョブ。」

「あーうん。有難う?つか説明してくれこの状況になったワケ。」

デパ地下から幽霊騒ぎについて聞いた。…怪談好きなクセに。真っ昼間に幽霊出るとか騒ぐか?ひよ子がこの手の話好きだけど。曰く付きの場所はあったけど何もねーぞ。俺無神論者だから信じてねぇ。

「なんつーか。おめでたい頭の警察だな。いるかそんなもん。見た事あんのかよ?」

小説とか漫画の話だろ。カオリンとヒロリンは苦手らしいけど。あ、がっくんもダメだったな。

「佐々木さんは信じないんですか?怪談話すのに。生々しい話でしたね。」

「あの話は聞いた。すげぇ好きな奴が居たから。」

それに生身で痛い怪談っつーか史実とフィクション混ぜた話だから。アイアンメイデンの話だし。魔女狩りとかそっち系詳しい知り合いが教えてくれた。聞いてなかったのに。

「好きな奴?遼の初恋?」

「ホラーが、すげぇ好きな奴だ。」

変な方向に持って行くな。つーかお互い女だ。

「それにしても、佐々木さんって黒っぽい服が好きですね。」

「血のシミって落ちねぇし黒っぽいから誤魔化すんだよ。白も嫌いじゃねぇんだけど汚れる。ジャケットとかは切られたら終わりだけどな。」

怪我の無い喧嘩はねぇ。自分の血で服が汚れるのもザラにある。だからあんま裁縫は役立ってねぇ。昔は便利だったけど。

「喧嘩っ早いお人だ。飯にしようぜぃ。」

「おう。」

まだ固まってんのが何人か居るけどその内復活すんだろ。ビビられんの久しぶりだなぁオイ。幽霊と間違うには俺デカすぎんじゃねーか?

「やれやれ。やっぱ好みと違うと文句言いたくなるもんだな。」

自力で食っていく予定も狂うし散々だ。下味ちゃんとしてんのかよ。自分で作りたくなる。

「理想高いんじゃねぇ?」

「んなワケあるか。味わいがある方が楽しめるだろ。デパ地下は拘らなさそうだけど俺はな。」

下味をしっかりしてさっぱり仕上げるとか、ただひたすらに煮込むとか、味付け次第で作る人の個性が出るもんだ。マニュアルは目安にするのが俺流。

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