文句あんのか | ナノ
酔っ払いの思考回路


土方視点。

今年で15になると言い切る、俺より目線の高い女。有り得ねえ怪力な癖に天人じゃねぇ。その怪力に、鬼兵隊が目を付けた。佐々木遼、普段は男物しか丈が合わないと袴を好んでいる。山崎が女物を着付けだのさせた時は、別人に見えたが目と声が変わっていなかった。

「思い出なんてそんなもんだろ。」

背中合わせに酒を飲む遼とつまみを食う俺。乾杯以外飲んでねぇんだよ。飲んだ内に入るか。思い出は美化しちまう。幸せにしてやれないと解っていて、手が出せるワケねぇ。

「幸せになって欲しいもんだけどな、惚れた女にだけでも。」

「何が幸せなんだよ?クソガキは知らねえぞ。」

具体的な事を知りたがる、と解釈していいな。その辺はガキだと思うが、認められるから無駄だ。溝鼠組とも事を構えた、前代未聞の女。一度リミッターが外れれば、鬼兵隊が目を付けた破壊兵器になる。本気になれば、それこそ江戸を廃墟にしかねない。そして何より…あいつとは正反対なのに、惹かれている。夜風に揺れる短い髪。傷痕だらけの白い肌と細い首は女だと実感する。

「テメェが無くした事がねぇからだろ。」

「はーて…どうかのう。」

妙に柔らかい声音。どこの訛りだ。まぁ、親無しのガキは掃いて捨てる程転がってる。戦災孤児だけじゃねぇからな。遼もそんなもんだろ。

「…マヨネーズかけていいか。」

「俺の肴に恨みでもあんのかテメェ。…勝手にしろ。もう俺寝る。」

ふらつかないまま、真っ直ぐに部屋に戻ろうとする遼は、顔が赤くなかった。酒臭いのに、珍しいタイプだな。

「…。」

一杯しか飲んでねぇのになんで気持ち悪いんだ。当てられたか?とりあえず厠にダッシュ。…そろそろ近藤さん達も潰れ始めるな。

「土方さん、遼は潰れやがったんで?」

「寝るって言ってたぞ。まだまだ飲めそうに見えたけどな。」

自称今年で15とは思えねぇ飲みっぷりだった。ビールじゃあるまいし、カパカパ飲んで有り難みを知らねえ。ちったあ酔えば可愛げがあんだろ。

「そいつぁーすげぇや。一番強い酒飲ませたのに。酒豪だ。」

「酒好きなんだろ。」

「笑いやしたか?」

「は?見てねえ。」

笑っただの笑わねえだの、遼の意志だろ。近藤さんは相変わらず世話焼きだな。しかし…山崎から色々聞き出してるらしい。何考えてんだ。

「土方さん、遼は色恋以外勘が鋭いですぜぃ。」

「そりゃ何だ。俺に喧嘩売ってんのか。」

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