文句あんのか | ナノ
壊滅的に似合わない
すとん、と四階から飛び降りて綺麗に着地する。遼の自宅は15階だが、飛び降りて足をひねった。…つくづく化け物である。
「やれやれ…高校行かないで情報屋本業にすんのもアリだな。」
お気に入りになったブレスレットを鳴らしながら、夜の街を歩き回る。遼の手首は男と言うには細すぎて、首と手首だけは女性らしいのだ。よってブレスレットは大きい。
「分かり易いもんだなぁ…女子高生なんてんなもんか?」
俺も一応なるかもしんないな、と口だけで笑い携帯をいじる。煮るなり焼くなり好きにしろ、俺はただの情報屋紛いだからな。
「若けりゃいいって免罪符みてぇ。」
警視から、ここのつまみは最高だと誘われ断る理由も無い遼はパクつきながら呟いた。
「若さの特権、佐々木君もそれで何とかしているだろう。一応俺もエリートなんだけど?」
「俺の貧困なそーぞーりょくじゃ未成年を飲み屋に連れて行くエリート様なんて出て来ねぇ。」
「あっはっは、そりゃ佐々木君の人生経験の未熟が原因だ。いい勉強になったろ?」
「とりあえず、目の前で美味そうに酒を飲む奴に殺意が沸くのは解った。」
「遼…君、一応女の子なんだから口調なんとかしようよ。」
それににやぁ、と遼は笑い箸を上げた。
「この図体と見た目でしなしなやったらキショイだろうが。」
「…仕草は確かに。口調も変えるなら仕草も変えなきゃ不自然…。」
「そういう事。つーか俺が拒否る。全力で。」
お猪口を置いて警視は遼をじっと見た。
「磨けば光ると思うけどな?遼は自覚ゼロみたいだけど。」
「したくもねぇな。おねーさーん天ぷら追加!」
「はぁい!」
「二年の付き合いでも解るんだけどな…中学生には難しいか。」
男のようでも女は女。多少なりとも色香を持つ。着実に遼の体は女に近付いていて、今は中性的に警視には見えた。身長と目つきのせいで男に見えるのだろう。
「26でロリコンか?人生終わったな。」
「いや俺は熟れた美人がいい。」
「…真顔で言うなよ。人妻キラーなのふれ回るぞ。」
「ちょ、遼!俺は誘って無いぞ!?…ちょっと思わせぶりしただけで。」
「まさにダメな大人の実例みたいなもんだな。」
人妻を誑かし、未成年の俺を飲み屋に誘うとか総監が知ったらどうすっかなーとからかう遼。遼は宣言をしない。
「遼…ホント弱みを握ったら遊びまくるな。」
「今更じゃねぇ?反応楽しいし。子供なんて言うなよ?実際ガキンチョなんだからさ。」
「解ってて言う辺り老成してんなぁ…俺が中学生の時は勉強に野球にって」
長々と話す警視の話を聞きながら遼は揚げたての天ぷらをつついた。…母親の話題は聞き流した。
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