文句あんのか | ナノ
料理上手の同年代


「佐々木、おはよう。」

「…はよ。」

くぁぁ、と欠伸をして伸びをする遼は頭が回り始めると幸村を寝起きで目つきも機嫌もよろしくない状態で見た。

「真っ昼間からなんか用か?」

「佐々木のご飯食べたくてね。暫く食べてないから。ヤミツキになるし。」

大丈夫だ、と自己暗示をかけながら幸村は笑顔を保っていた。

「夜は出掛けっから昼飯で良けりゃ作ってやる。」

ボリボリと頭を掻きながらコーヒーを淹れに行く遼。

「…どこに?」

「みっちゃんち。朝一に爺さん送ってったから飯食いに行く。」

「みっちゃん…誰?」

「手塚国光。頭超かってぇ優等生様で尚且つ見た目も美人なテニス部員。」

コポコポとお湯を注ぎながら溜め息を吐く。

「他人がどう生きようが勝手じゃねぇか。ユキチャン砂糖とかいるか?」

「あ、自分でやるよ。ありがとう。」

「んー。見ても楽しかねぇが俺着替えんぞ。」

「あ、う、うん。」

バサッとTシャツを脱いで適当に着替えていく遼をチラリと幸村は見て、固まった。

「佐々木…おん、な?」

「あれ?言わなかったか?せーぶつ学じゃ女だぞ。」

初耳でプラス衝撃的すぎます佐々木君。そう幸村は思ってしまった。

「全然…見えないね。」

「昔っからだな。つーかユキチャンさ、倒れたって聞いたぞ?」

「…うん。明日から入院するから…。」

「その話し方だと結構マズいみてぇだな。血の臭いはしねぇし俺の勘じゃ楽しみにしてるテニスも怪しくなるってとこか?」

それに幸村は頷いた。

「俺で良けりゃ聞いてやるし泣いてもいいぜ。守秘義務って奴だ。」

「佐々木っ…な、何で、俺がっ…!」

堰を切ったように溢れ出す涙。まだやりたい事もやらなきゃいけない事もたくさんあるのにどうして、と嘆く幸村。

「ユキチャンかなり意地っ張りだからな、誰にも言わなかっただろ。」

「言え、ないっ…言える筈が無い…!」

「ユキチャンさぁ、付き合い長いヤツらいるだろ?もうちょい頼ってやれよ。それも出来ねえか?」

「俺は部長なんだ!」

「いや、あのな。責任感あんのはいい事だ。でもそれで潰れたら元も子もないだろうが。」

「弱った俺なんか、誰も見たがらない…」

「見ててやるよ。少なくとも俺はな。人間強さと弱さ兼ねてんだ。ま、調べといてやるよ。」

「佐々木…」

「弱音吐いてたりめーだ。万能なんざいねぇ。絶対もねぇ。疑ってナンボだ。」

「俺は、佐々木が羨ましい…。」

「ちげぇな。他人が羨ましいんだろ?」

「…うん。でも、佐々木は特に羨ましい。」

「一つ教えてやる。口約束程、信用しちゃいけねぇもんはねぇ。」


遼は幸村の傍に泣き止むまで居た。

佐々木…どうしてキミは俺を甘やかすんだ?頑張りすぎとか、何で解っちゃうかな?自由すぎて、憎いぐらい羨ましい。…でも、ありがとう。佐々木は嫌がると思うけど、キミは俺の本音を聞いてくれる友達だ。

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