文句あんのか | ナノ
永遠の命題


血管を浮かせながら笑い、睨み合う遼と静雄。これが出会いだったと言うのもロマンチックではない。決して。

「遼、ちょっと飯頼みてぇんだけど。」

「即なら昨日の残りか、みっちゃんちからお裾分けされた筑前煮だな。つーかへーちゃん、俺の評判氷点下にして楽しいか?」

「今時の中坊が俺知ってるか?つーかその呼び方と女装は止めろつったろ。」

「女装にしか見えなくても俺は生物学上女だ!校門前で待ち伏せとかざっくんすら出来なかった暴挙だぞ!?…単に興味無いだけだと思うけどな。」

「蚤虫とも知り合いかよ。俺は何だろうがお前を女だとは思わねえ。」

「ったくよぉ、オフの日ぐれぇバーテン服止めてくれたら俺少し救われんだけど無理な気がする。」

「よく分かってんじゃねぇか。行くぞ。」

「俺に指図すんな負け犬がぁぁぁ!!」

「手塚せんばぁぁぁぁい!佐々木先輩のスイッチ入りましたぁぁぁ!!」

互いに怪力なので、被害がシャレにならない。バス停と道路標識で鍔迫り合いと言うのも非常識だ。

「…どう収拾つけろと。」

「へーちゃん、俺言ったよなぁ?上から目線大嫌いだって。」

「俺は十年近く長生きしてんだけどなぁ?」

血管を浮かせながら笑い、睨み合う2人。怖すぎて近寄るどころではない。ミシミシと金属が軋んで、歪んでいく。

「学習しようぜへーちゃんさぁ。気絶するまでボコッたの忘れたかぁ?」

「遼も大人とタメ口利こうなんざ百年はえぇ。」

「悪かったなぁ、俺はこれでも義務教育真っ最中のクソガキなんだよ。」

「自覚してんのに改めねぇんだからお前も学習しねぇなぁ?」

同時に金属が折れ、溜め息を吐く全員。

「あー、ただでさえ低い評判が絶対零度に一歩近づいたな。」

「関東最強の時点で悪名高いだろうが。」

「俺から変なのにふっかけた覚えはねぇぞ。腹減ったし帰る。みっちゃん、何してんだ?」

止めてくれと頼まれて出来なかった。と正直に言えない男のプライド。

「被害拡大を防いでいただけだ。」

「ふーん?へーちゃん、今日和食に決定したけど食うか?」

「そうだな。遼の家の近くにコンビニあったか?」

「あんぞ。タバコか?」

オンとオフの差が激しい2人だが、毎回こうなる訳ではない。

「あ、おっしー。ただいま?」

「おかえり遼ー!筑前煮食ってえぇ?」

「…遼、誰だこいつ。」

忍足がほとんど話していたが、静雄には嫌われずに済んだ。こんな日も、ある。

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