文句あんのか | ナノ
最高級の素材


ザンザスの虫除けとして、遼は度々ドレスアップして優雅な所作を披露せざるを得ない。化粧と身長を考えれば、凄まじく迫力のある美女に化ける。しかし、複雑なのは護衛につくメンバーだ。

「遼、何か飲むか?」

「そうね、シェリーを頂けるかしら?」

甘い酒は基本的に飲まないのだが、場が許さない。化粧のプロが嘆く程、傷痕だらけの肢体を誤魔化し笑顔を保つ遼が怖い。アレがどうなってこうなるの?と毎回思ってしまう。自販機を担いで走り回る化け物と、何も知らない人は思わないぐらい化けている。

「何者なのあの女!ザンザス様のお気に入りだからっていい気になるんじゃないわよ!」

陰口を叩く美貌を自慢するお嬢様方に、内心でスクアーロの鬼嫁で一児の母やってる壁だの床だの蹴りで破壊する非常識な人です、と答えずにはいられない。どこをどう調べても、遼は疚しい事をした過去が出て来ない。

「ザンザス、少し席を外させて頂くわ。」

「早めに戻ってきてくれ。片時も離したくない。」

お互いに鳥肌を立てたくなる、甘ったるいセリフに笑顔をキープしながら席を外す。

「ルッス。笑顔引きつらなかったか?」

「えぇ。相変わらず苦手なのねぇ…気持ち悪そうだけど。」

「ブラッディ・マリーの比じゃねぇ。酒悪すぎ。悪酔いしそうだ。んで、ちょいと気になる気配がな。」

「了解。遼ちゃん、獲物はあるかしら?」

「いざとなったら蹴り殺すから気にすんな。多分連中はグルだ。」

特注ハイヒール、効果は推して知るべし。ちなみに、スクアーロも護衛で自己暗示に忙しい。

「グルよ。4人でも切り抜ける程度の格下だから安心して。」

「ご大層な待遇でいらっしゃいますな。悪酔いしそうな酒が土産か。」

鼻で笑うと、優雅な足取りでザンザスの元へ向かう。女性隊員は少ないヴァリアーで、ここまで化けて武器を持たずに平然としていられる者は居ない。ましてやザンザスを守る気が無いのだから。

「お待たせしてごめんなさい、ザンザス。」

「いや、さほど待っていない。この後を考えれば早い方だ。」

再び鳥肌もの。その後、予想を裏切らなかった暗殺劇は皆殺しに終わった。

「うげ、ドレス破けた。」

「あんだけ派手に殺っといて破けない方が不思議だろぉ。着とけ。」

際どい破け方のスレンダーなドレス。これ以上は自分の理性も危ない、と判断したスクアーロの上着を腰に巻く。軽く飲んだだけだと遼はほんのり赤くなる。

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