文句あんのか | ナノ
一生懸けて恋を
山本が立ち去った後、遼は息を吐いて威圧感を即座に消した。これ以上チェーザレを怯えさせる訳にはいかないからだ。
「悪かったな、チェーザレ。お前は悪くないからな。怒ってないから。」
スクアーロを無視して、腕の中で震える我が子に優しく語りかける母親。子供はギュッと母親に抱きついて微笑ましく見えない事も無いが、その前が大問題。
「いい子だ。怖ければ泣いてもいい。今はな。」
その子供を抱えて殺し合いをしようとした遼だから、恐ろしい事極まりない。
「…なぁ、遼。」
「聞くなバカ!言わなくても解っただろうが!」
久々に拝んだ、遼の赤面。しかしスクアーロはじっと遼を見つめている。どう口説けばいいのか全く解らないのだ。気心知れた最愛にして最強と謳われた遼。今もなお伝説として語り継がれ、個人的な知り合いは数多くいる。
「イタリアに、帰ろうぜぇ。3人で。」
「無理だ。騒ぎを余計にデカくしたのお前だろうが。収拾つけるまで最低でも2日はかかるぞ。」
素っ気ない一言だが、事実なのだから仕方がない。生身で戦うだけならともかく情報戦までこなす。尤も、遼が一番苦手なのは利害が絡まない心理戦。自分も押さえつけてやるぐらいなら吹っ飛ばしたいタイプ。
「それは…悪かったぁ。」
「何回言えばお前は満足するんだ?何度も聞かされる身分にもなれ。」
しかも謝るのは恋愛事情に纏わる事ばかり。遼は辛抱強いタイプではない。狙った獲物は出来る限りの手を打って待つ、知恵がついたのだ。しかし恋愛に疎いのは相変わらず。甘え下手も同じだ。逞しく育ちすぎて豪快と言われてもおかしくない。
「コレ、もう一度付けてくれねぇかぁ?」
服の下から出されたネックレスに、2つの指輪。さしもの遼とて、まだ持っていたのかと目を見開いた。白銀と黒、スクアーロと遼の特徴であり、ヴァリアーに相応しい色とルッスがデザインした。
「…呆れてものも言えないな。」
「イエスか、ノーか聞いてんだぁ。」
「片手で引きちぎると首が折れるんじゃないか?」
なんとも色気の無い遼。しかし本気でやりかねないのだから恐ろしい。ザンザス程ではないが、スクアーロも気が短い。鎖から指輪を取ると、問答無用で遼の左手に填めた。
「…やっぱり、遼の手にあるのがいい。」
複雑な表情を浮かべながらまだ顔の赤い遼。どうしてこいつはそういう恥ずかしいセリフを臆面もなく言えるのか、と思わずにはいられなかった。
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